私も一言 「6.30報道」失望と憤り込めて
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張景瑞・朝鮮大学校研究院
経営学部で経済学を専攻していたので、学部三年の時から時事問題についての見識を深めようと「日本経済新聞」をほぼ毎日チェックしてきました。ただ、七月一日の朝刊にて、六月三〇日に板門店で電撃的に実現した朝米会談についての記事をいくつも掲載していたのですが、その内容はどれもがっかりするものばかりでした。マスメディアに対する失望と憤りを込めて、未熟ながらも少しだけ自らの考えを述べたいと思います。
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①六月三〇日に実現した板門店での歴史的な朝米首脳の面会について、まるで金委員長が、対話への焦りから突然の呼びかけだったにも関わらず、応じたかのように記事が書かれていました。
今回の面会については、交渉でどちらかが特別に焦っているというわけではないと、私は考えています。それは、以前から両首脳が公式に発言したり、親書をお互いに送りあったりしていることから もわかるように、首脳間の関係の良さから実現したと考えられるからです(楽観的ではありますが…)。
今回の会談について、焦っているのが誰なのかをあえて挙げるとすれば、国家の首脳間という、あくまでも立場上フラットな関係ながらも、ペコペコ媚を売りながら、接待しかできず、これからの東アジア情勢を鑑みたときに決して必要のない不良品たちを税金で爆買いしている島国の長だと思います。蜜月関係だとマスメディアは報道していますが、果たしてその関係は何のために構築しているのか、その政治、外交は果たして、日本の(外国人も含めた)国民たちのためのものなのか、このような点について、しっかりと報道すべきではないでしょうか。
②これを政治ショーで終わらせず、北朝鮮の非核化へつなげるべく行動させるべきだとの社説について。
日経新聞上で、今回の電撃的会談を「政治ショー」と表現していましたが、これに対しては特に異論はありません。なぜなら、こんなにも歴史的瞬間をして、むしろ政治ショーと言わずになんと言えましょうか。朝鮮半島における終戦、そして平和を本気で実現するための歩みが、全世界の注目を浴びることなど当たり前のことです。朝鮮半島での終戦、そして東アジアの平和と安定を望むからこそ、トランプ大統領は安保破棄を口にしたのではないのでしょうか。しかし、SNSでの呼びかけからたった一日で、こんな粋な演出ができる両首脳と文在寅大統領に自分自身とても驚き、感動しました。本当に喜ばしいことです。
ただ、前日である六月二九日に朝鮮大学校で行われたシンポジウムにて、浅井基文先生がおっしゃっていましたように、今回の会談が歴史的な出来事であることには間違いありませんが、あくまでも一連の対話の中のひとコマなので、劇的に交渉が発展するのではと過大に期待すべきではないと思います(もちろん期待してしまいますが)。これは朝米間で行われる会談や協議の全てにおいて言えることです。半世紀以上もの敵対関係を解消するためには、いま実際に行われているように、じっくりと長期的な対話を進めていくべきだからです。
一年前のシンガポール会談以降に、発表された宣言を、誠実に履行したのは共和国側でした。結局、二月に行われたハノイ会談でもわかったように、一方的に譲歩を押し付けているのは米国であり、そこで合意がなされなかったのは、段階別同時行動を主張する共和国の立場を考えてみれば当たり前です。もちろん、アメリカからしても、他の国々に対して用いたのと同じ計算法で考えているのに、共和国は応じてこないとなれば、到底合意することはできないでしょう。
去年情勢がよくなったものの、それでも未だに停戦しているだけで交戦国同士。少し距離が縮まろうと、相手が米国なだけに、丸裸にされればリビアやイラクの前例のようになる恐れがあると考えるのは当たり前のことだと思いますし、トランプ大統領の側近には強硬派のポンペオ国務長官とボルトン補佐官がいるので、なおさら一方的に銃を下すことはできません。
それに、植民地支配から始まって、戦争、半世紀以上にわたる分断、そして自主独立国家として生き抜くために乗り越えた数々の経済的苦難や自然災害など、これまでどれだけ苦しくても乗り越えてきたというのに、もし金委員長がこれまで人民達と共にしてきた苦労をそっちのけにして、ハノイでの米国の主張を飲んでいたとしたら、共和国の人民たちが絶対に許さないはずです。おそらく日本でのマスメディアの報道とは真反対です。彼らはハノイ会談は失敗であり、国内での威信が揺らぐのを防ぐためにミサイル発射を含む軍事訓練を行なったと報道しました。しかし、あくまでも終戦もしておらず、停戦状態であり交戦中なので、万が一を想定した平時の軍事訓練が行われるのはやむを得ないでしょう。トランプ大統領が叩かれながらも黙認したのも、対話を継続していくという意思の表れだったのだと思います。
あくまでも停戦中で、お互いの主張はかみ合わずにすれ違っている中、それでも本気で平和のために対話を続けるとすれば、これからはお互いの意見のすり合わせと歩み寄りが大事になるはずであり、交渉は長期的なものになるでしょうが、その結果は必ず良いものとなるはずです。
③朝日首脳会談を条件無しで行うことに関して賛成が46%で、反対37%を上回ったとの世論調査を行なったという記事について。
まず、前提として、日本側は共和国に対して、条件付きだのなんだのと言えるような立場ではありません。間違いなく。
安倍首相はこれまで拉致問題解決ということを条件に掲げ、自らは何もせずに周辺国のリーダーたちに泣きついてきました。
しかし、共和国側は最近の日本政府のこのような発言に対して、朝日首脳会談をそんなにも実現したいのであれば、まずは植民地過去清算や従軍慰安婦問題、竹島問題、そして在日朝鮮人への弾圧など、日本政府が誠実に向き合って解決すべき問題に取り組むべきだと主張しています。これは当たり前のことです。
日本が勝手に条件を取り払おうが、共和国側から提示されている条件を満たさなければ、朝日会談にはたどり着けないでしょう。安倍首相が本気で朝日首脳会談を実現したいのであれば、その本気度を行動で示すべきです。
ただ、そんな彼のとった行動には本当に驚きました。まさかの対韓輸出規制の決定です。
いや、つい先日に議長国として臨んだG20とは果たしてなんだったのか。「自由で公正かつ無差別な貿易・投資環境を実現し、開かれた市場を保つために努力する」との文言を、採択した「大阪宣言」に盛り込んだそうですが、一言一句すべてが嘘なのでしょうか。それとも、「記憶にございません」という魔法を使って乗り切るつもりでしょうか。
とりあえず、日本政府はもしも本気で朝・日会談を行いたいのであれば、今の国際的な立ち位置、東アジアでの立ち位置を把握し、果たすべき責任に目を背けずにしっかりと認識して、賢明な判断と誠実な行動を持って、平壌の門を叩いていただけたらなと思います。56
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