平壌から「今」を伝える #第38信(2019.2.4他)
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金圭蘭:第38信(2019.2.4他)
整理者:筆者の金圭蘭[東京朝鮮第三初級学校18期・東京朝鮮中高級学校21期卒業生]は、編者・金日宇の妹である。朝鮮大学校の工学部機械科に在学中の1972年春に帰国した。
長年住み慣れたアパートの建て替えのため、仮住まいで長女夫婦と一緒に暮らしている。近く、新築のアパートへ転居するようだ。
原文は大方日本語で、一部単語は朝鮮語。書き手のニュアンスをそのまま伝えるため、誤字、脱字だけを直した。文中[ ]内と注釈は、整理者が付けくわえた。 (「記録する会」 キム・イルウ)
■2月4日付
イルウオッパ(兄さん)、スッチャオルケ(姉さん)、新年二〇一九年を迎え、おめでとうございます。
寒さが増す年末、小四のチュウォニ[同居する長女ウナの長男]と幼稚園に通うチュヨンイ[二男]が冬休みに入りました。
正月の準備は、まずは部屋の片づけに、飾り物の準備。チュヨンイが幼稚園で習ってきた折り紙の飾り物づくりを、チュウォニは風船に紙を小さく切ってつくった紙吹雪と新年のお祝いカード、プレゼントの番号、そこにもう一つ、正月の分担(例えば、掃除、配膳、後片付け、子守りなど)を書いたカードを入れ、それを一緒に糸で天井からぶら下げました。
正月当日は大騒ぎです。大人六人と、子ども五人、一人ひとりが針で一一の風船を刺したので、部屋も人も紙吹雪だらけ…大変なことになりました。チハ[キュラニの長男]は食器洗い、テハ[二男]は配膳、ウナ[長女]は後片付け、ヨンスニ[チハの連れ合い]は配膳、ウンジュ[テハの連れ合い]は子守り、プレゼントは番号に従って一つずつ、慎吉雄校長からもらった手袋 やマフラー、それからスッチャオルケが贈ってくれた靴下やタオル、使い捨て髭剃り、クリームなどです。
子どもたちには、私が編んだチョッキ、それから最近流行っている立体紙工作(厚紙に印刷されたものを切って、飛行機や乗用車などを組み立てるおもちゃ)。それから子どもたちのカードには「歌いなさい」、「踊りなさい」、「正月の挨拶を」とか、「ポッポしなさい」…。
風船が割れるたびに花吹雪が舞い、子どもたちは大喜びしました。
正月の料理は豚の骨のスープ、キムパブ[朝鮮風具だくさんのり巻き]、豆腐飯、カキフライ、コロッケ、三色ナムル[野菜和え]、ぜんざい。ヨンスニが餃子とキムチ、ナマズの唐揚げ、ウンジュは餅とミカン、梨とリンゴを持ってきました。
男性はお酒を、女性と子どもはミカンとリンゴの皮と生姜に砂糖と水あめを混ぜた自家製ジュース、美味しかったようです。
昼前から夕方まで食べて、飲み続けました。
翌日は、ウナは診療所の当直、チュウォニアホジ[ウナの連れ合い]は家にいたので、孫を預け、私は亡夫の兄の家に挨拶に行きました。テハとチハも家族揃ってきて、親戚とも久しぶりに会い、やっぱり夕方になって解散しました。
三日は各自、親戚や友人の家に行ったので、一人新年辞の学習をしました。
長くて短いお正月休み。家族ごとに写真を撮り、年賀状を送りました。届きましたか?
六日の日曜日は、ウナが家にいたので、孫の子守りから解放、コ・ミョンファ先生[東京朝高当時の先生]とパン・スミトンム[日宇の同級生]と一緒に新年会。最近、オープンしたお寿司屋さんに行って、エビ、タイ、イカのお寿司を食べました。お寿司大好きです。
午後はヒョンジュ[キュラニの兄の長男]の家に行きました。結婚して何か月もたたないのに家に帰らせたと…いろんな事情があったようです。
◎「ウリハッキョの鐘の音」
新年、二〇一九年も万景台学生少年宮殿で、平壌市内の児童生徒が参加する迎春公演が行なわれました。在日朝鮮学校から選ばれた児童生徒たちも一緒に参加しました。舞台いっぱいに演じる子どもたちの数が例年と比べて多く見えました[「朝鮮新報」によると、一三〇人]。みな祖国の地で新年を迎え、舞台に立った誇りとうれしさがみなぎっていました。
音楽舞踊話の題目は、「ウリハッキョの鐘の音」。ふと、映画の一場面が思い浮かびました。
タイトルは思い出せません。日帝時代、金亨稷先生[金日成主席の父]が学校の鐘を鳴らす姿、貧しい子どもたちに教えたことが罪に問われて日本の警官に捕まっていくシーン、二度と学校の鐘の音を聞くことができないのではと落胆している子どもと村人に「朝鮮は死んでいない…」と、鐘を鳴らす康盤石女史[金日成主席の母]…。
それに加えて4・24教育闘争…「ウリハッキョの鐘の音」を奪おうと、朝鮮学校を踏みにじった日本の警官ら…この鐘の音を守ろうと、戦いの道で血を流し立ちあがった同胞一世たち…。
今は三世、四世、五世たちが、その道を歩んで行く。「朝鮮学校に『無償化』適用を!」を掲げ、ジュネーブに向かったオモニたち、集会を開いたり、駅頭や街頭に立ったりする同胞、学生たちを一瞬たりとも忘れたことはありません。
「ウリハッキョの鐘の音」は本当に感慨無量でした。
六日に会ったコ・ミョンファ先生も、迎春公演を観て、やっぱり思うことが多かったと言いました。
教育とは、辞書には①教え育てること、②一定の方法で未成熟者の心身両面を発達させるよう導くこと、と書いてあります。しかし、ウリ民族教育は、ただ子どもたちに朝鮮の言葉と文字を教え、歴史と文化、音楽を教えるだけではなく、その過程に、朝鮮人の魂を伝え、民族の代、愛国の代を伝えるのでは…。
金正恩元帥の「民族教育事業は、総連の存亡と愛国偉業の勝敗を左右する在日朝鮮人運動の生命線であり、天下之大本です」という教えが思い浮かびます。
ウリハッキョは、本当に子どもたちに朝鮮民族の魂を植える、同胞社会の核と言えましょう。
「ウリハッキョの鐘の音」は、今日も明日も、遠いい未来まで受け継がなくてはならない…と、感銘を受けました。
◇
オッパ! 今日はこのくらいにします。
追・一月二四日に荷物が着きました。男性用の上着、女性用のズボンに靴下と傘―嫁と息子、婿と娘と分けました。キュラニへのジャンパー、気に入りました。カレールー、スパゲッティー、餅、旧正月に一緒に食べました。
くれぐれも健康で! オモニによろしく。今年は会えるのかな…。
二〇一九年二月四日
キュラニ記す。
■2月20日着
急に慎吉雄先生との面会、ビックリ…。一五日に食事を。『朝鮮学校のある風景』昨年七月以降の四冊、受け取りました。
皆元気です。
旧正月[二月五日]には、みんな集まってオッパが送ってくれた餅とスパゲッティー、カレーを作って、美味しく食べました。
二月一六日[金正日将軍の誕生日で休日]は、うちで焼き肉しました。
『風景』を見ると、スッチャオルケ(兄嫁)の記事が多くなりましたね。嬉しいです。
冬休みの話、同封します。
◎平壌の学生たちの冬休み
冬休みもそろそろ終わります。さて、今年の冬休みをここの子どもたちはどのように過ごしたのか、書いてみます。
平壌の大学生たち(卒業班は冬休みなし)、地方から上がってきて勉強するトンムたちはもちろん帰郷。家族と友達にも会って、その間の話に花を咲かしながらも、復習、新学期を前に色々準備。平壌生たちは三池淵に動員です。一月二日に平壌駅を出発し、月末には戻ってきました。白頭山を望む三池淵郡の建設は金正恩元帥が発起、その呼びかけに応えての労働奉仕です。寒い冬、大変だったでしようが、三池淵郡建設に、貢献できたという誇り、自負には比べ物になりません。
中学生(初級も高級も)は、やっぱり勉強、初級中学三年生は高級中学に進学するために、高級中学三年生は大学に進学するために必死に勉強。そしてサッカー、バレーボール、バスケットボール、卓球など、体操クラブに。学校や青年会館などは休みなく開いています。
小学生は学校の宿題とクラブ活動…。個別に習いに行く[正規の学校ではなく、私塾のようなところ]トンムたちもいます。五年生になると、卒業試験に、上級学校入学試験の準備に追われて大変です。
今年の冬は例年に比べ寒くありません。なぜか、雪も五回しか降りませんでした。でも、外で遊んでいる子どもを見かけません。もちろん午前中は学習班運営の時間なので、学校でも、区域の青年同盟の指導員たちが遊ばないよう見回りをします。家に閉じこもって、パソコンゲームか、映画でも見ているようです。
午後になると、公園のローラースケート場に集まります。ルンラ遊園地や、ムンスプール、リュギョンスケート場にも行くようですが、[有料なので]休日や、四〇日の冬休み期間中に一回ぐらい。科学の殿堂にもよく行くようです。
◇
本屋さんに行くと、「쉽게 만드는 립체놀이감[簡単に作れる立体オモチャ]」が並んでいました。1~12まで出ていて、よく売れていると言っていたので、一冊買って、孫のお正月のお年玉がわりにプレゼントしました。何日もかかって切って、折り曲げて、糊付けして完成させました。見た目にも素晴らしかった。パソコンゲームで時間を過ごすよりはいいようです。自分で作るので、面白いと。一冊送ります。
*整理者注・「立体おもちゃ」12点の素材が入っている。
➀と②は、「승용차」、乗用車というよりスーパーカー➂は「손전화기」、携帯電話。待受画面は科学の殿堂 ④は旅館、窓から表情豊かなパンダ、像など一〇の動物が顔を出している ⑤は図書館⑥は「손가락인형」、動物の指人形 ⑦は虎 ⑧はライオン ⑨は軽ヒコーキ ➉はスーパーカー ⑪と⑫は装甲車。
パッケージには「観察力・想像力・構想力・空間知覚力創造力」の文字が、幼稚園児と低学年の児童を夢中にさせているようだ。
パン・スミトンムが「工作入門 おもちゃの作り方」を借してくれました。チュウォニ[キュラニの長女の小四の長男]はさっそく、糸電話、からポリ競争艇、ペーパードールを、チハ[キュラニの長男]叔父さんと一緒にプロペラ自動車を作って楽しんでいます。
チュウォニが一番面白がったのは、からポリ競争艇でした。使いかけの洗剤をビンに移して、ポリ容器を潰して穴を空けて、プロペラを作って、針金を曲げてゴムで止めて…。洗面所の盥の中で試運転、成功です!
そんな日々を過ごして、二月も中旬に。五日の旧正月、2・8建軍節、そして2・16の光明節、一九日は정월대보름(旧暦一月一五日)、風習に従い前日の昼食は麺を食べ、翌朝は冷酒、五目飯に九つのナムル[野菜和え]を…。何年か前から一九日もカレンダーで赤い日、休日です。
そして二〇日から授業が始まり、孫からの「解放の日」です。孫の面倒も大変…。
「立体オモチャ」のような、新しい遊びが出てこないかな…楽しみです。54
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