羅勲・総聯千葉支部副委員長殺害事件から20年、「今」に伝える
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もくじ
断じて許せぬテロ行為/羅勲・支部副委員長を殺害、千葉朝鮮会館に放火
■「朝鮮新報」日本語版(1998年10月20日付)
日本の右翼団体などによる反共和国、反総聯騒動が続く中、15日未明、総聯千葉県本部および千葉支部などが入る千葉朝鮮会館(千葉市中央区)に凶漢が侵入し、宿直中の羅勲・同支部副委員長を殺害したうえ、会館に放火する事件が発生した。日本政府やマスコミが、共和国の人工衛星打ち上げを「ミサイル実験」と決め付けていることで、右翼などによる総聯や在日同胞に対する脅迫・暴力が相次いでいる。こうした流れの中でついに、同胞の忠僕として働いてきた総聯活動家が殺害され、在日朝鮮人運動と同胞生活の拠点である会館が放火されるという前代未聞の犯罪が発生した。総聯県本部では16日午後に記者会見し、事件は政治的意図を持つ計画的テロ行為であるとして、日本当局に速やかな犯人逮捕と真相究明などを強く求めた。
政治的で計画的な凶悪犯罪
15日未明、千葉朝鮮会館に侵入した凶漢は、会館内を物色し手提げ金庫を奪い、1階と2階に揮発性の油をまき、宿直していた総聯千葉支部の羅勲副委員長の頭部を凶器で殴り、 首を絞めて窒息死させたうえに、焼くという蛮行をはたらいた。
警察当局は15日午後、強盗殺人・放火事件と判断し捜査本部を設置、120人の捜査員を動員して捜査を進めている。
この事件は単なる刑事事件ではなく、共和国の人工衛星打ち上げを契機に悪質な反共和国、反総聯策動が長期的に繰り広げられている中で起こった断じて許しがたいテロ行為である。
総聯に対する脅迫行為は、人工衛星打ち上げ直後の9月1日から連日のように起こっていた。ひどい時には1日に5~6件もあり、夜中には正体不明者からの脅迫電話が尽きなかった。千葉朝鮮会館では、さる9月22日、右翼団体が13台の街宣車を動員して挑発、妨害行為を行い、県下の各地域では総聯と在日朝鮮人への規制、弾圧をあおるビラも撒かれた。
また9月12日には、右翼団体が総聯中央会館の入り口を封鎖し、「朝鮮人を殺せ」「火をつけるぞ」などの暴言を吐いた。
総聯傘下各団体や朝鮮学校、商工会、朝銀、個人に対する暴言・脅迫が強行されているだけでなく、チマ・チョゴリの朝鮮学校女生徒に対する嫌がらせ事件も頻繁に発生している。
こうした背景には、日本政府が共和国の人工衛星打ち上げを認めずミサイルと決め付け、一連の「制裁措置」をとったことがあり、今回の事件も決して偶発的なものではない。
日本社会全般に朝鮮人に対する民族排他主義が蔓延し、関東大震災当時を彷彿させる殺伐とした雰囲気の中で、ついに在日朝鮮人運動と同胞生活の拠点である朝鮮会館を放火し、総聯活動家の生命まで奪うという凶悪な犯罪が起きたのである。
速やかに犯人逮捕と真相究明を/総聯千葉県本部が談話
総聯千葉県本部は16日午後、千葉市内で記者会見し、事件は単なる刑事事件ではなく、政治的意図を持つ計画的なテロ行為だとする徐昌武委員長談話を発表した。
談話は、事件は共和国の人工衛星打ち上げをきっかけに反共和国キャンペーンが繰り広げられ、総聯機関や朝鮮学校生徒を含む在日朝鮮人への暴行、暴言、脅迫などの人権侵害が引き起こされていることと密接に関連していると指摘。そして、事件は、共和国に対する「制裁措置」などの敵視政策がなければ発生しなかったとしながら、日本当局が速やかに犯人を逮捕し、事件の真相と背後関係を徹底的に解明するとともに、事件の再発を防ぐ実効的措置を取るよう強く求めた。
会見に同席した横堀正一・日朝親善千葉県の会事務局長は、県下の日本人弁護士や地方議会議員、各界人士などで真相調査委員会をつくり、県や政府に速やかな真相究明などを求めていくことを明らかにした。
総聯中央第1副議長、遺族と活動家を慰問
総聯中央の徐萬述第1副議長は16日、事件の現場などを訪れ、遺族と現地の活動家らを慰問した。
徐第1副議長はこの日の午後、まず千葉朝鮮会館を視察し、警察の現場検証に立ち会うなど事件後の動向を見守っている総聯千葉県本部管下の活動家らに、慰問と激励の言葉を述べた。
徐第1副議長はまた、羅勲副委員長の遺体が運ばれた斎場で、母親の梁月先さんら遺族と面会し、羅勲副委員長は20年以上、組織と同胞のために愛国熱情をすべて捧げた貴重な同志、同胞の親しい友であったとしながら、反動らが有能な活動家を無残にも虐殺したことに憤激を禁じ得ないと述べた。徐第1副議長は遺族を慰問、激励し、羅勲副委員長の命を奪った犯罪行為を断固糾弾し、たたかっていくと語った。
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総聯千葉支部副委員長殺害・放火事件から半年
■「朝鮮新報」日本語版(1999年4月23日付)
昨年10月15日に総聯千葉支部の羅勲副委員長が殺害され千葉朝鮮会館が放火された事件から、今月15日で半年が経過した。目下のところ、警察の捜査が犯人逮捕・真相解明に向けて進展している様子はない。その一方、反共和国・反総聯の世論操作が強まっていることもあり、地元同胞や組織にとっての不安要素は尽きない。現況と背景を見る。(賢)
真相解明進まず、「敵視」あおる風潮に尽きぬ不安
千葉県警では事件発生当初、120人体制による特別捜査本部を設置した。最近、県警が総聯県本部に説明したところでは、現在もこの体制で捜査を続けているものの、有力な手がかりは得られていないという。
そうした中、地元同胞らの間には、捜査当局の真意などに疑問を持つ空気もある。捜査の端々に、「総聯監視」とも取れる要素がちらつくからだ。
ある同胞女性(70)は、「聞き込みの警察官から、総聯の会費は払っているか、などと質問されたことがある。事件と何の関係があるのか。警察手帳を持たずに来たり、高圧的にものを言われたこともある」と、不快感を隠さない。
2月には、朝銀千葉の職員に対する県警捜査員の尾行が明らかになった。
総聯県本部によれば、この職員は事件との関連性がまったく考えられず、所轄署に置かれた捜査本部の幹部からも、事件とは無関係との言質が得られているという。
しかし県警は、総聯などの抗議に対し、不安を与えたことは申し訳ない、などとしながらも、納得のいく説明は行っていない。
ただこうした事実があるとは言え、総聯県本部は真相解明を追求する立場から、警察の協力要請には応じている。日本人有志による事件調査委員会の廣瀬理夫事務局長(弁護士)は、「捜査への警戒感が生じても無理もない現状の中、総聯は適切な対応に努めている」と指摘する。
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■「朝鮮新報」日本語版(2001年10月29日付)
千葉殺人放火事件から3年、県警は犯人逮捕に全力を
進まね捜査、同胞社会にいらだち
総聯千葉県本部、千葉支部などが置かれている千葉朝鮮会館を何者かが襲い、宿直していた羅勲・総聯千葉支部副委員長(当時42歳)を残忍な方法で殺害し、会館に放火するという前代未聞の事件から3年――。しかし、事件の真相究明と犯人逮捕は遅々として進んでおらず、地域同胞社会の不安はつのるばかりだ。
不誠実な態度
康東勲・総聯千葉県本部副委員長は19日、千葉県警の伊藤哲朗本部長あてに申入書を提出。犯人逮捕に全力を尽くすことを求めるとともに、事件の捜査本部の有無や捜査の進捗状況をただした。しかし、応対した県警の川島邦芳総務部広報課課長代理は「私は知らない」と言い放ち、「自分は申入書を渡すだけだ」と冷ややかに答えた。
事件直後、120人体制で出発した県警の捜査本部だが、3年たった今も解決の糸口は見つかっていないという。事件直後から毎日のように顔を出していた捜査員も、昨年の春からはぱったり来なくなった。
こうした動きを知った地域同胞の間では「捜査本部は縮小、あるいは解散したのではないか」といううわさが流れ、同胞活動家の尊い命が犠牲になった事件が迷宮入りすることを憂慮する声は絶えなかった。
総聯本部が県警に申し入れをするのは今回で5回目。これまでも「現在調査中だ。捜査に全力を尽くしている」との答えを繰り返してきた県警だったが、事件の担当ではないものの「知らない」と返答したのは初めてだった。
捜査本部の有無すら明かさない県警の不誠実な対応に同胞の怒りは爆発。申し入れに訪れた8人の総聯代表は35分間、この間のいらだちと怒りを交えながら真剣な捜査を求めた。
理解しがたい行為
申し入れの場で同胞の怒りが爆発したのは、犯人を追うべき警察の理解しがたい行動があったからだ。
事件から1年を迎えようとしていた1999年9月22日、千葉朝鮮会館に出入りするある日本人業者は突然、事件の捜査を担当している県警捜査一課長から脅しとも取れる暴言を浴びせられた。
「なぜ総聯と取り引きするのか」
「総聯の人間は北朝鮮で教育を受けて活動する日本の敵だ」――。
総聯本部はこの件に関し、会館の担当捜査員を通じて暴言が捜査本部の指示によるものなのか、捜査員個人の判断なのかを明確にするよう抗議したにもかかわらず、逆にその後捜査一課長は業者を訪ね、「なぜ総聯に告げ口したのか」と不当な圧力をかけた。
それ以前にも捜査員がこの年の2月9日に朝銀職員を、9月14日には総聯職員を尾行していたという事実が明らかになった。
また県警の捜査員は、羅さんのオモニを訪ねるたびに「総聯が協力してくれない」と示唆していたという。総聯本部のある活動家は、捜査に全面的に協力した総聯を侮辱し、犯人扱いする県警の対応に「怒りを覚える」と憤慨する。
今も深い悲しみ
現在、故羅勲副委員長のオモニは、生前の羅さんと住んでいた千葉市内の団地で1人暮らしをしている。総聯支部では毎月1回、訪ねては世間話をする。「今でも息子が帰ってくるようだ」とつぶやく姿はいつ見ても胸が傷むと李英植・支部委員長は話す。
今回、県警への申し入れに加わった同胞女性(28)は、「県警の対応は心の通うものではなかった。本来協力し合うべきなのに…。これでは亡くなった羅さんに申し訳がたたない」とくやしさで一杯だった。
このたび総聯本部は県警に対し、犯人逮捕を求めるとともに米国でのテロ事件に便乗して同胞に対するいやがらせ、暴力、脅迫などが起きないよう、事件を未然に防ぐことも合わせて要望した。それは、事件が解決されていないことが同胞の不安をいっそうかきたて生活を脅かしているからだ。事件は狂乱的な「ミサイル騒動」の渦中に起こったもので、その後も同胞や朝鮮学校生徒に対する暴言やいやがらせは続いている。
活動家が惨殺されたテロ行為は二度と繰り返されてはならない。千葉県警は捜査をいっそう強化し、犯人逮捕、事件の真相解明に全力を尽くすべきだ。52
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