在日朝鮮人が体験を記した作品で同胞社会への理解を手助けしたい
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プム出版社 代表
鄭美英さん
プロフィール
- 1972年1月 生まれ
- 朝鮮学校とともにする人びと「モンダンヨンピル」編集局長
- 韓国京畿道在住
「ウリハッキョの児童・生徒たちは、断絶して生きて来た南と北の両方の文化を自然に受け入れている、二つとない大切な存在です。」
「私の世代の韓国人が持つ在日朝鮮人のイメージは、ひどく歪められたものです。テレビに出てくる在日朝鮮人はスパイかたどたどしい韓国語を話す成金で、朝鮮学校を守って来た話や在日朝鮮人の団体については聞いたことさえありませんでした。」
「在日朝鮮人は、母語が日本語でありながら、朝鮮語を学んで、考えや価値観、感情表現までを朝鮮人らしくしていかなくてはいけない、それを、代を継いで実践しています。貧しい中、差別に打ちひしがれて生きて来た一世、二世が、厳しい中でもそれを守って伝えてきたことを思うと、彼らの言葉に対する思いの重大さが、『朝鮮人であること』の切実さが伝わってきます。……五世の子どもが「アンニョンハシムミカ?」とあいさつするまでの、これまでの同胞たちの長い道のりを考えると、胸が熱くなって涙が出そうになります。」(本文より)
南北の文化を自然に受け入れている同胞たち
金淑子二〇一七年にプム出版(poom books)をスタートさせ、その第一弾として今年一月に、在日朝鮮人二世の朴基硯さんが東京朝鮮中高級学校を舞台に書いた作品『ぼくらの旗』を出版されました。本の売れ行きはどうですか?
鄭美英第一刷として二千部を印刷して、七か月ほどで一三〇〇部が出ました。今も毎日少しずつ売れています。
『ぼくらの旗』は、朝鮮学校に学校閉鎖令が下されて、様々な事件があった中で、民族学校を存続させるために「都立」の道を選んだ一九五〇年前後の東京朝鮮中高級学校を舞台にした作品で、闘いはもちろん、日本人の先生たちとの友情や、初恋など温かい話もたくさん出てきます。朝鮮学校に興味のある方はもちろん、在日朝鮮人の歴史をもっと知りたいと思っている方たちも読んでくださっているようです。韓国の読者の多くは四十代から五十代、六十代初めで、懐かしい自分の学生時代とすり合わせながら当時の朝鮮学校に出会っているようです。
金在日朝鮮人への関心が高まっているのでしょうか?
鄭そうだと思います。二月の平昌オリンピックが大きなきっかけになったと思います。その後四月二七日に板門店の南側で南北首脳会談が行われて、一か月後には北側でも行われました。六月にはシンガポールで北米会談も開かれて、この半年間の流れは急激でした。このような流れを永い間待ちわびていた人びとには感動の連続でした。そんな中で在日朝鮮人について初めて知った人もいますが、十年以上前、南北交流が盛んだったころに出会った在日朝鮮人たちを思い出して、動き始める人も多いようです。八月一五日には南北労働者のサッカー大会が開かれました。これからスポーツ交流や文化交流がますます活発になるでしょうし、金剛山観光や開城工団を再開するという話も出ています。
そうして南北が交流を重ねる中で、七〇年の歳月に積もった互いの「異質感」を埋めてくれるのが、在日朝鮮人ではないでしょうか。ハッキョで子どもたちに会うたびにそう思います。ウリハッキョの児童・生徒たちは、断絶して生きて来た南と北の両方の文化を自然に受け入れている、二つとない大切な存在です。南北が壁を取り払って互いを理解しようとするとき、彼らの役割は計り知れない程大きくて、可能性は無限だと思います。子どもたちはそんなことを想像もしていないでしょうが。実際に文化芸術の分野で交流している人びとの近くには、それを支えている朝鮮学校出身者が大勢います。
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