怒り! 愛知・無償化裁判、不当判決、差別行政を追認
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モンダンヨンピル>>>ブログ2018.5.3
去る四月二七日、板門店で歴史的な南北首脳会談が行われた時刻に、日本の愛知県名古屋市では、「高校無償化」一審の判決の裁判がありました。訴訟をしたのが二〇一三年一月二四日ですから、五年以上戦ってきた裁判の最初の判決が下されます。 愛知朝高卒業生と在校生が原告となって、日本政府に朝鮮学校の高校無償化制度を適用するよう要求しましたがこの日も無惨に無視されました。
裁判は午後二時でしたが、傍聴券抽選のために昼の一二時を少し過ぎた時刻から、生徒や各地域から来た同胞、支援者の日本人約五〇〇人が、裁判所前に集まりました。モンダンヨンピル事務局と名古屋で留学中のクォン・ウンフイ会員夫婦の他、の韓国から応援に来てくださった多くの方が一緒でした。
朝鮮半島で進行中の平和の雰囲気とは異なり、愛知地裁前の雰囲気は緊張感と切実さが入り混じって複雑でした。この日の朝、ほとんどの同胞が、南北首脳が会う映像を見て感激していましたが、わずか数時間後の裁判結果は、一筋の期待をわずか数秒で踏みにじった判決でした。
今回の裁判で最大の争点は、被告側(日本政府)が主張した総連と北朝鮮によって朝鮮学校が「不当な支配」を受けているという論理でした。
学校運営の適正さを判断する時、上記のような「疑い」があるという理由で、高校無償化適用から朝鮮学校を除外する処分は違法ではないと理論付けしてきた被告側の主張を裁判所が受け入れた判決でした。
裁判に参加した弁護団のペ・ミョンオク弁護士は「朝鮮学校が一般の学校とは違って、民族教育を実施している学校」として、裁判官が判決文で引用した「思想的要素がない民族教育」という言葉に、裁判所の激しい偏見を感じると指摘しました。朝鮮学校では、中立公正の教育が行われておらず、北朝鮮の立場に属する教育を受けていると主張しました。
日本の学校が日本の立場で社会と歴史教育をするように、朝鮮学校も日本の学校と教育内容が異なるのは当然なことですが、それがあたかも「不当な支配」であるかのように認めた判決でした。
また、内河惠一弁護団長は判決文の「教育内容が生徒に与える影響力、支配力が大きいため、生徒が自由で独立的な人格に成長することを妨げるような介入(例えば、誤った知識や一方的な観念を子どもたちに植え付ける内容の教育を実施するような)による弊害が顕著であることを考慮すれば」という文章を例に挙げ、まるで裁判所が子どもを心から心配しているような脈絡に見えるが、結局は民族教育と朝鮮学校の教育の問題を指摘することに目的があると、今回の判決文の間違いを指摘しました。
傍聴券抽選のために約二時間待って、裁判が始まるやいなや、五秒にもならない判決主文を読んだ裁判官は、逃げるように退場してしまいました。もうおなじみの高校無償化裁判の風景になってしまいました。
裁判の結果を熱心に待っていた生徒たちと同胞たちは「不当判決」という通知を広げた同胞弁護士を見て、涙ながらに怒りました。五年に渡って四回も裁判部が換わり、この裁判直前に換わった新しい裁判部が既に作成された判決文を代読する形となりました。前の裁判官は、全員上級機関に栄転して行ったという裏話も聞くことができました。
こうして時間をひっぱってきた一審の判決の結果は、若い生徒と同胞たちの期待を無惨に裏切るひどい判決でした。
この日は、記者会見場と報告集会にこれまで以上に多くの方々が集まりました。早くから裁判所の前に集まっていた生徒も、だれも帰りませんでした。弁護団の判決内容の説明を聞かなければという思いが強かったのでしょう。
それだけこの裁判の重要性と今後の対応について心配しているとのでしょう。重く複雑な心境でその場に一緒にいました。
弁護士は説明に先立ち、まず生徒に本当に申し訳ありませんと涙を流しました。いつもの裁判の時と同様、弁護団の涙ぐましい努力の跡がにじみ出る挨拶で始まりました。
東京中高オモニ会会長の発言を皮切りに、京都、広島、福岡から駆けつけた朝鮮学校のオモニたちの発言は、裁判に敗訴した絶望感よりも不当な判決について、最後まで戦っていくという固い決意でした。 オモニたちの要求は明確で意志は強固です。子どものためにどんな犠牲も覚悟する朝鮮学校のオモニたちは、声の限りに叫びました。この戦いは、必ず私たちが勝つのだと。 愛知朝鮮学校と保護者会は声明の中で、五年前に原告になって裁判に出た一〇人の生徒と二六回に及ぶ口頭弁論の結果が、今の安倍政権下では、単なる政治的な問題の口実にしかされない現実を糾弾しました。 日本の学校の子どもたちが大事であれば、当然、朝鮮学校に通う子どもたちも同じ基準で教育すべきで、「民族教育」が行われる重要な唯一の基盤である朝鮮学校を政治的基準で判断してきたこれまでの裁判同様、、今回も政治的基準で判断したと糾弾しました。 しかし、「未来がある若者」の学習の権利を保障するまで、決して退かないしあきらめもないと語りました。
日本の政治、社会に根強く残っている清算されなかった植民地の意識が、朝鮮学校をはじめとする在日朝鮮人に対する差別になっているという点、また、この判決が極端な偏見によるものだということをよくわかっている多くの日本人が朝鮮学校の戦いを応援して協力してくれていることを明らかにして、感謝の意を伝えました。
夜九時過ぎ、決意大会の最後は、愛知朝高の生徒でした。
この日の裁判を最初から見守った朝高生は保護者と学校、同胞と先生、そして共にしてくれた日本の方々に感謝を表し、長い長い戦いの結果に驚き、怖さを感じたと語りました。なぜ朝鮮人が朝鮮人の教育を受けることについて法で判断を受けなければならないのか納得できない、学校生活の楽しさと民族のルーツを学ぶ勉強を決して放棄しないと念を押しました。
生徒は、再び控訴するでしょう。戦いはまだ終わってない、これから再び始まると言います。
五月一五日には、広島朝鮮高校無償化裁判の控訴審が開かれ、四か月後、九月二七日には、大阪でも控訴審判決が出ます。長く困難な戦いの道に出たウリハッキョの子どもたちと同胞たちに、応援している南の故郷の人々の声が届けられればと思います。49
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もくじ
リベラルを装った愛知・朝鮮学校への不当判決
民族教育の矜持のために、高校無償化裁判闘争は続く
藤永 壮·fbノート(二〇一八年五月二日)
韓国のインターネット新聞『PRESSian』二〇一八年五月二日付に掲載された「아베 신조 정권의 『조선학교 탄압』은 계속된다:리버럴을 가장한 아이치 조선학교에 대한 부당판결(安倍晋三政権の「朝鮮学校弾圧」は続く:リベラルを装った愛知朝鮮学校への不当判決)」の、日本語オリジナル原稿(一部修正)です。
二〇一八年四月二七日、愛知朝鮮中高級学校の高級部生徒・卒業生が「高校無償化」制度不適用に抗議し、国に対して国家賠償を請求した裁判において、名古屋地方裁判所は原告の請求をすべて棄却する不当判決を言い渡した。南北首脳会談の成功によって、朝鮮半島が、世界が、大きく和解と平和の進路へと歩み出した歴史的な日に宣告された、日本政府の差別政策を正当化する判決内容であった。まさしく、日本という国家の固陋頑迷さを際立たせるタイミングでの判決となった。
あっけなく言い渡された不当判決
日本に存在する高等学校に相当する教育施設の中で、全国に一〇校ある朝鮮高級学校の生徒だけが「高校無償化」制度から排除されてから、はや五年余りが経過した。この露骨な差別政策に対して、大阪、愛知、広島、九州(福岡)、東京の五つの朝鮮高級学校の生徒あるいは学校法人が国を相手に訴訟を起こし、長く苦しい裁判闘争を繰り広げている。
このうち二〇一七年七月二八日に宣告された大阪地裁判決では、原告が全面勝訴する画期的な成果を収めたものの、同年七月一九日の広島地裁と九月一三日の東京地裁では原告敗訴という正反対の結果となった。四校目の判断となった今回の名古屋地裁判決には、地元愛知だけでなく、日本全国から朝鮮学校関係者や支援者が駆けつけ、韓国から来た支援者も含めて約五〇〇名が裁判の傍聴を求めて列をなした。
しかし提訴から五年以上の歳月を費やした判決の言い渡しはあっけなく終わった。裁判官は「原告らの請求をいずれも棄却する。訴訟費用は原告らの負担とする」と主文だけ読み上げると、直ちに立ち去ったのである。閉廷後の法廷内では怒号が飛び交い、傍聴席に入れず地裁前で判決を待っていた人々は、抗議のシュプレヒコールを繰り返した。
名古屋判決の特徴
名古屋地裁の判決要旨を読むと、広島や東京の不当判決とは、また別の問題点を抱えた、ある意味では一層悪質な判決だと感じる。
広島、東京の判決は、朝鮮学校が朝鮮総聯の「不当な支配」を受けている疑いがあり、朝鮮高級学校に「高校無償化」制度を適用すれば、学校に代理交付される就学支援金が流用される疑いがあるので不指定にした、という国の主張を支持するものだった。名古屋の判決内容は、広島、東京よりさらに踏み込んで、「不当な支配」の疑いを認定するものとなっている。その根拠には、国側が大阪裁判での敗訴を受けて新たに証拠として追加した朝鮮高級学校教科書の記述なども含まれている。
名古屋判決の特徴として、まず生徒・保護者が「民族教育が受けられる点を重視して朝鮮高校を進学先に選択していること」を認めながらも、「民族教育の価値を尊重すべきことと、「不当な支配」が疑われることは別個の問題」と断じている点を指摘できる。「民族教育の価値」は認めても、その「民族教育」は「不当な支配」を受けながら実施されていると、朝鮮学校の教育内容はおとしめられている。
もう一点、判決では、朝鮮高級学校への不指定処分が「拉致問題などの政治外交上の理由に基づくもの」という原告の主張を受け入れ、「拉致問題が不指定の理由にならないことは、原告らの主張のとおりである」と、政治的・外交的理由による不指定処分の不当さを認めるような態度を示している。にもかかわらず、朝鮮学校には朝鮮総聯の「不当な支配」が疑われるのだから「いずれにしても文部科学大臣としては不指定処分をせざるを得なかった」と、結局はその違法性を認定しなかった。
すなわち、原告側の主張をほとんど無視した広島・東京判決と比較して、名古屋判決は一見、主張を受け入れるポーズを示しながら、最終的には論点を「不当な支配」に落とし込んで、朝鮮学校側の主張を退けるという筋立てになっているのだ。
リベラルを装った傲慢な判決
しかし「不当な支配」については、判決においてでさえ「合理的疑念が存在した」程度にしか認められていない。「疑いがある」というだけで朝鮮高級学校を不指定処分にしたことが、「教育の機会均等に寄与すること」を目的とする高校無償化法の理念に反するのではないかという本質的な問いに、名古屋判決は答えていない。
そもそも「不当な支配」云々が、後付けの理屈に過ぎないことは、動かしようのない明白な事実である。安倍晋三政権は政治的・外交的理由をもって、朝鮮学校を「高校無償化」制度から排除するため、その根拠となる規定を削除するという横紙破りの手段を使ったのであり、このことの違法性がまず問われなければならない。「不当な支配」論は、国側が規定削除の違法性を十分に認識していたからこそ持ち出してきた虚構の根拠である。
判決は、民族教育について「自己の民族的アイデンティティを確立することが、その人格形成に当たって極めて重要なものであることも十分首肯し得る」として、その価値を認めている。ところが一方で、「無償化」制度不適用は「愛知朝鮮高校において民族教育を行う自由」や「原告らが愛知朝鮮高校にて学ぶ自由」を法的に規制するわけではないという。「無償化」制度からの排除は、植民地主義に根差す差別であるという朝鮮学校側の異議申し立てに対して、名古屋地裁は、国が民族教育を妨害しているわけではないという形式論をたてに、応じようとはしなかったのだ。
つまり名古屋地裁は、民族教育の価値を認める「多様性」への理解や、朝鮮学校の主張を受け入れる「理性」を示し、いかにもリベラルな立場を装いつつも、実のところ朝鮮学校では朝鮮総聯による「洗脳教育」が行われているという固定観念のもとに、「無償化」制度からの排除を是認したのである。昨今「慰安婦」問題などをめぐって、日本のリベラル論壇では、韓国の民族主義をやり玉に挙げる一方で、植民地主義批判の甘さが目につくが、これに通じるような傲慢な思考回路がこの判決からも感じられる。
決意を新たにした報告集会
判決日の夕方に開かれた報告集会では、まず弁護団から判決の内容とその問題点について解説があり、続いて朝鮮学園、原告、支援団体などから抗議声明が読み上げられた。また東京、大阪、広島、福岡、京都、静岡など日本の各地域の代表や、韓国の「〈ウリハッキョ〉と子どもたちを守る市民の会」の孫美姫代表が連帯のアピールを述べた。そして集会に参加していた愛知朝鮮中高級学校の生徒たちがステージに上がり、代表の生徒が最後まで闘い続ける決意を表明したうえで、みなが「金曜行動」の歌「声よ集まれ、歌となれ」を歌った。毎週金曜日、東京の文部科学省前では朝鮮大学校の学生を中心に抗議行動が続けられており、韓国でも日本大使館前で連帯の行動が実施されている。
今回の敗訴が、「高校無償化」制度適用に向けての展望をより厳しくしたことは間違いない。しかし一方で、理路整然に見える名古屋判決の内容の空虚さには、粘り強く続く民族教育の矜持を守る営み、ひいては在日朝鮮人による植民地主義克服のための営みの本質に思いを及ぼすことのできない「哀れさ」を感じる。東アジアの平和構築が現実味を帯びるなか、長期的に見ていずれが勝利するのか。板門店での南北首脳会談の成果に感じ入りながら、歴史の審判が正当に下されることを信じたいと思う。
なお同じ日に第一審で勝訴した大阪では「無償化」裁判控訴審の第三回弁論が開かれ、大阪朝鮮学園理事長の代表意見陳述を最後に結審した。 大阪高裁での判決言い渡しは、九月二七日一五時からと決まった。49
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すべての子どもたちが「日本の子どもたち」と同じく祖国を知る権利、民族を誇る権利、世界に羽ばたく権利が、平等に与えられるべき
愛知朝鮮学園の声明
本日の判決に接し、私たちは深い悲しみと湧き起こる憤りを禁じえません。
私たち愛知朝鮮学園が、≪高校授業料無償化≫から除外されるのは重大な憲法違反であり不当な差別だとして日本国を訴えた裁判に、きわめて不当で冷酷な判決を名古屋地裁が下しました。
私たちは5年前、日本政府を相手に勇敢にも原告となって立ち上がった10名の在校生たちとともに、2013年1月24日に提訴し、26回に及ぶ口頭弁論を経て本日を迎えることとなりました。
この間、私たちは安倍政権のもと、生徒たちには何の関係もない政治問題を口実に、朝鮮学校だけを無償化制度から除外し補助金をカットするなど残酷で冷淡な所業を目の当たりにしてきました。
≪高校授業料無償化制度≫の画期的な点は、無償化の対象を学校教育法第1条で規定する学校に限らず、外国人学校やインターナショナルスクールなど「各種学校」にまで広げたことです。朝鮮学校も当然その中に入ります。
その朝鮮学校を排除するのは、憲法上の「法の下の平等」「教育の機会均等」の明白な違反です。そこに「朝鮮との関係」などという「政治・外交問題」が入り込む余地はありません。
生徒や保護者は「私たちは民族の言葉や文化を学びたいだけなのに」「子供たちに民族の心を育ませたいだけなのに」と訴えてきました。しかし、一貫して日本政府の「朝鮮敵視政策」の犠牲になり、生徒たちの学ぶ権利は侵害され蹂躙されてきました。
生徒たちは、勉学やクラブ活動に励み、友人たちと語らうはずの大切な青春の日々の多くの時間を割いて、街頭に立ち自らが声を上げました。自らのルーツや言葉を学ぶという基本的人権が侵されている現実を訴え、出自に関係なく堂々と社会で生きていけるようにとの心の声が届くことを信じて、ビラを配り署名活動をやってきました。
説明するまでもなく朝鮮学校とは、朝鮮語を授業用語として在日朝鮮人の子どもたちを対象に在日朝鮮人によって運営されている学校のことです。そして、在日朝鮮人とは、日本による朝鮮への植民地支配の結果、日本で暮らすようになった朝鮮半島にルーツをもつ人々とその子孫の総称です。
すべての根源は帝国日本による朝鮮侵略・植民地支配にあります。
日本が植民地支配で朝鮮人から言語・文化を奪い、名前を奪い、土地を奪い、直接間接に強制的に連行した結果、解放直後、日本には200万人を超える朝鮮人が住んでいました。しかし、その子供たちは、朝鮮語を受け継ぎ朝鮮人としての民族意識を保持することも困難な状況に置かれていました。
朝鮮の人々が、人間としての尊厳を取り戻し、奪われた言語・文化・民族のアイデンティティを取り戻すために、「金のあるものは金を、力のあるものは力を、知恵のあるものは知恵を」というスローガンの下、各地に「国語講習所」を設けました。それが今日の朝鮮学校の原点なのです。
日本の子どもたちが、ゆたかな日本人として育てられなければならないのと同じように、朝鮮の子どもたちも、やはり豊かな朝鮮人として育てられなければならないことは単純明快な自明の理であり当然すぎるほどの権利であり切実な要求です。その場所が朝鮮学校にほかなりません。
「日本」にも「朝鮮」にも「世界」にも、そこには「同じ」子どもたちがいて、皆が将来への夢と希望にその胸をときめかせています。すべての子どもたちが「日本の子どもたち」と同じく祖国を知る権利、民族を誇る権利、世界に羽ばたく権利が、平等に与えられるべきです。
しかし、国連人権理事会の対日人権審議会などでの度重なる勧告にもかかわらず、高校無償化制度の対象から唯一除外されているのが朝鮮学校です。
私たちは、本日の不当な原告敗訴判決を到底受け入れることはできません。
私たちの裁判運動が、必ずやすべての朝鮮高校の授業無償化への道を開き、停止している「就学支援金」が過去に遡り支給されるよう補償し、国や行政による「民族差別」、ひいては朝鮮学校の存在そのものを事実上否定する不寛容で非民主的な教育行政が是正され、「未来ある若者」の学ぶ権利を保障するものとなるまで私たちは決してひるむことも諦めることもありません。
日本国政府は、朝鮮学校だけを高校無償化制度から排除することを是認した本日の不当な判決が日本の恥辱、国際的な恥辱だと認めざるを得なくなることでしょう。
最後になりましたが、朝鮮学校の差別に対し、憲法違反の差別・人権侵害を許してはいけないという一般論にとどまらず、自分たちの重大な問題として係わって下さったすべての方々に敬意を表します。日本の政治・社会に根深く残る無反省のままに清算されていない植民地意識・帝国意識が、朝鮮学校をはじめ在日朝鮮人に対する差別、さらには朝鮮に対する予断と偏見の根源であることを、深い洞察または人間的直感によって看破された多くの日本の方々が私たちの裁判運動を支え、惜しみなくご協力下さったことに心からの感謝を表します。
私たちは、今、「闘いはこれからだ」と決意を新たにしています。これまで通り、「弁護団」の方々、「ネットワーク愛知」のみなさん、愛知はもとより日本全国から裁判に駆けつけてくださった心ある方々、激励のメッセージを寄せてくださった皆さんや韓国の市民運動活動家たち、これらすべての人々の大きな支援を揺るぎない力にかえて、国家による「民族差別」の是正と「就学支援金」支給の補償を強く求めてまいります。
これからもマイノリティーに寛容で公正な日本社会を目指して、子どもたちの未来をより輝かしいものにするために共に闘っていきましょう。
本日は、私たちの裁判を支援するためにお集まり下さり本当に有難うございました。
2018年4月27日
学校法人愛知朝鮮学園 理事長
愛知朝鮮中高級学校 学校長
愛知朝鮮中高級学校 父母会
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正当性が原告たちに、私たちに…十のデマ記事が裁判官の目を曇らせるならば、私たちは千の声で裁判官の耳を啓こう
名古屋地裁判決を受けての無償化ネット愛知の声明
愛知朝鮮中高級学校の学生・卒業生が原告となり、「高校無償化」からの排除の不当性を訴えて、日本国を相手に闘ってきた裁判、2013年1月24日に5名が提訴、さらに同年12月19日に5名が提訴し、10名の原告を中心として、26回にも亘る口頭弁論を闘ってきた裁判に、名古屋地方裁判所は、本日、不当にも原告敗訴の判決を下した。原告たちの声に耳を貸さず、「高校無償化」法の趣旨を顧みず、子どもたちの人格をはぐくむ民族教育の意義を無視する不当判決に、私たちは怒り、抗議する。
裁判では10名の原告全員が意見陳述を行った。裁判所は何を聞いていたのか。1人の原告が勇気と決意を持って証言台に立った。裁判官は何と向き合ったのか。無償化弁護団は、朝鮮高校生への無償化適用の除外は、憲法に保障された権利の侵害であり、民族差別であり、民族教育への弾圧であることを、明確に緻密に立証してきた。しかし裁判所は、朝鮮高校現地に出向く検証を拒否し、下村博文文部科学大臣(当時)らの重要証人を却下した横暴に示されたように、この裁判に正面から向き合おうとはしなかった。人権の砦であるべき裁判所が、原告たちの声より、真実の立証より、平気で人権を踏みにじる国の意向に従う姿は哀れであり、憤りを禁じ得ない。
2010年に朝鮮高校が「高校無償化」から外されて以来、朝鮮高校生たち自身はもちろん、卒業生、家族、教員、支援者らが多くの時間を割いて、署名、街頭宣伝をはじめ、さまざまな形で行動し、問題を訴えてきた。日本政府よ、いつまで学生たちにこんなことをさせるのか。日本政府は一刻も早く過ちを認め、朝鮮高校生にも「無償化」を適用して就学支援金を支給し、安心して民族教育を受けられる環境を作るべきであることを、改めて訴える。
この不当判決は日本社会の現状を映す鏡である。朝鮮高校を「無償化」から除外した日本政府による「公の」民族差別は、各地の自治体が朝鮮学校への補助金を減額・停止する引き金になり、2016年3月29日の文科省通通知がこの差別・弾圧の流れに拍車をかけた。こうした朝鮮学校で学ぶ学生たちへの差別、民族教育への弾圧に対して、抵抗の声をあげない日本社会は、民族差別を歴史的に抱え込み、内在化している事実に気づこうとしない。だから裁判所は、臆面もなく国におもねる不当判決を下せたのだ。この不当判決が、日本社会にある差別を助長するようなことがあってはならない。
私たちは負けたのではない。正当性が原告たちに、私たちにあることは初めから明らかだ。今日の判決は真の勝利にいたる過程にすぎない。十のデマ記事が裁判官の目を曇らせるならば、私たちは千の声で裁判官の耳を啓こう。朝鮮高校への「無償化」適用を求める全国の闘い、東京・大阪・広島・福岡の各地での裁判闘争と連帯し、私たちは最後の勝利まで闘い続けることをここに誓う。
2018年4月27日
朝鮮高校にも差別なく無償化適用を求めるネットワーク愛知
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愛知朝鮮高校生就学支援金不支給違憲国賠訴訟弁護団声明―法の番人としての司法の役割を自ら放棄するもの…少数者の人権の最後の砦として行政の差別を正すべき司法としての責務の放棄するもの *次号に掲載。*声明の各タイトルは本編集部による。
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激昂! 大阪補助金裁判・請求棄却
行政の差別に司法が加担!
リポート:チョン・ミヨン(朝鮮学校とともにする人々「モンダンヨンピル」教育チーム長)
「民衆の声」への寄稿 (3・25)。原題は「3・5秒で『朝鮮学校補助金の剥奪』正当化した大阪高等裁判所」
※写真はモンダンヨンピル
私たちは日本で生まれて育ち、日本社会で働き、税金もきっちりと納めて暮らしている。朝鮮学校とすべての各種学校に一九七四年から支給されてきた修学補助金が停止し、外交などの問題で朝鮮学校にだけ交付されていない事態が続いている。政治家と自治体に与えられた無制限の裁量権が、私たちの子どもの学ぶ権利を侵害している。朝鮮学校に通う子どもたちは今後、日本社会の構成員として生きていく。日本の学校に通わない理由は、日本人ではないからだ。自身のルーツを朝鮮学校で学び、未来を目指して夢を育み、学校に通う。政治と分立されて当然の司法が、子どもたちへの差別といじめを認める判決を下したことを、子どもたちにどのように説明すればいいのか。どんな理由であれ、子どもたちは社会と大人に保護されるべき存在であるにもかかわらず、日本では朝鮮学校の子どもたちだけは除外される。しかし朝鮮学校に子ども送る母親としては、やめることも放棄することもできない。子どもたちの未来のために最後まで闘っていく。―東大阪朝鮮初中級学校 学父母―
三月二〇日に大阪高等裁判所で開かれた朝鮮学校の補助金に関する控訴審判決に保護者代表として臨んだ母親が、裁判後の記者会見で述べた言葉だ。
日本の民主党政権は二〇一〇年四月に高校無償化法を制定し、公立学校はもちろん私立学校や各種学校、外国人学校にもこの制度を適用した。ところが唯一朝鮮学校だけは対象から除外した。
大阪市では一九八八年から「義務教育に準ずる教育を実施する各種学校」として補助金を支給し、大阪府では一九九一年「私立外国人学校進行補助金」制度を作って府内の十校の朝鮮学校に補助金を支給してきたが、二〇〇八年に就任した橋下徹大阪府知事は、朝鮮学校としては受け入れられない一方的な条件を提示して支給を保留した。
二〇一二年三月二九日、不本意ではあったが大阪府が提示した条件を受け入れ、補助金支給の再開を求めた学校側に対する答は、予想外だった。その年の二月に朝鮮で開催された迎春公演に朝鮮学校の生徒が参加したことを問題視したのだ。日本政府が朝鮮学校差別の正当性を主張するたびに出してくる政治的万能カードだ。
同年九月二〇日、原告となった朝鮮学園側は、大阪府と大阪市を相手に二〇一一年度に補助金支給を停止した行政処分の取り消しを求める訴訟を起こし、二〇一四年一月にはこれに国家賠償を追加した。
大阪地裁は昨年七月二八日、「高校無償化」から朝鮮学校を除外した文部科学大臣の処分を取り消し、朝鮮学校を無償化法適用の対象に指定しろという判決を下した。これは朝鮮学校側の初の勝訴判決だった。しかし法律で制定された無償化法とは異なり、いわゆる「補助金」制度は自治体長の裁量権に大きく左右されるゴム紐のようなものだ。実際に現在朝鮮学校に補助金を支給している自治体は、二八都道府県中半分以下の一〇都道府県に過ぎない。
北朝鮮の核・ミサイル実験と日本人拉致問題を主な理由としている。政治的立場保全のために中央政府の目の色をうかがう自治体長の一言に、朝鮮学校の生徒や学父母は、裁判を通じて権利を獲得する闘いをしているのだ。このような現象が、日本社会の無関心の中で、朝鮮学校全域に拡大しているというのがさらに大きな問題だ。
無償化裁判とともに補助金裁判を行っているは、日本の五地域(東京、広島、愛知、九州、大阪)の中でも唯一大阪地域だけだ。二〇一七年一月二六日に大阪地方裁判所であった一審判決は、補助金交付を拒否した大阪府と市の決定が「自治体の裁量権の範囲内の処分」だとして、原告(学校)の請求を棄却した。控訴を提起した大阪朝鮮学園はこの日あった控訴審判決で裁判所の正義を期待したが、日本の司法は一審同様、自治体に軍配を挙げた。
「原告の請求を棄却する。訴訟費用はすべて原告が負担する」
一年間、控訴審を準備してきた弁護団、保護者、日本人支援者、そして傍聴席最前列を埋めた二六人の高級学校生徒が聞いた裁判官の主文は、わずか3・5秒だった。
主文を読んだ裁判官は、逃げるように法廷を抜け出して、現場にいた人たちは唖然と裁判長の去った席を見つめるしかなかった。厳しい中で民族教育を守っている朝鮮学校を、中央政府や自治体、司法が渾然一体となって、日本社会から徹底して排除する判決は、たったの一言だった。
この日は朝から、小雨が降る曇り空だった。高等裁判所の前では、チマチョゴリの制服を着た高級部の生徒たちと黄色い帽子をかぶった初級部の児童たちが、裁判の結果を見守るために、雨の降る中で待っていた。裁判所の前に集まった記者たちは、生徒や保護者、そして日本人支援者が重苦しい表情で横断幕を持って行進する姿をカメラに収めた。高級部生徒二六人が法廷に入れるように、当選した傍聴券を譲る保護者の表情は複雑だった。
生徒たちが当然与えられるべき権利を奪う判決を、少なくても生徒たちがわかるように弁明でもすべきではないか。
高校無償化法と補助金は日本にあるすべての生徒が学ぶ権利を支援する政策という点から、歓迎されて当然の制度だ。しかし政治家たちの胸三寸による適用対象差別は、根深く受け継がれてきた日本社会の低俗な意識を煽る形態そのものであり、マイノリティーに対する法適用の差別は何よりも悪い。
今年は、解放後日本で在日朝鮮人たちが様々な犠牲を払って守ってきた民族教育史でも大きな権利獲得闘争だった4・24阪神教育闘争70周年を迎える。朝鮮学校閉鎖令をはじめ半世紀以上に及んで民族教育抹殺に全力を注いできた日本政府の抑圧の脈を、今日の司法も受け継いでいるということだ。
裁判が終わって夜九時過ぎまで続いた報告集会は、弁護団の判決説明に続いて、判決に対する抗議の場となった。朝鮮学校に関連した裁判があった日にはいつも行われる集会だ。裁判結果を思うと重苦しい集会を想像するが、同胞たちの報告集会は明るく力にあふれている。抑圧や差別に鍛錬された強さが、新鮮だ。力強い歌を歌って互いを慰め、励まして、笑みを絶やさない姿に目頭が熱くなった。
四月二七日には愛知地方裁判所で無償化裁判がある。二〇一三年一月に卒業生と在校生一〇人が原告となって提訴した裁判は、一審判決まで五年の歳月がかかった。
最近世間を騒がせて安倍政権の致命打となっている森友学園は、同じ大阪市所在の私立学校法人だ。大阪府と大阪市が朝鮮学校に補助金支給を停止した時期は、森友学園が認可を得た時点だ。安倍晋三の名前を付けた小学校を建てる校舎の敷地を、安価で譲る契約をしたというスキャンダルで波紋を呼んでいるが、それによって安倍は政権維持に深刻な打撃はもちろん、国会の叱責と市民の抗議が続いている。
天皇に忠実な市民になる教育をする私立学校、過去の植民地教育を連想させる教育をする学校は守って、莫大な支援をする日本政府に、民族教育の厳しい歴史を耐えてきた朝鮮学校を判断する資格があるのか、日本社会と政治家に聞いてみたい。同時に九〇%以上が南側にルーツを持つ在日同胞の子どもたちの教育の現実を、私たちはどれほど認識しているのか、考えると恥ずかしい。せめて同じ民族である在日同胞の子どもたちの厳しい闘いに応援の声でも届けるべきではないだろうか。
南と北に和解と平和の春風が吹いている。世界の耳目が集中した平昌オリンピックを通じて一つの民族、一つの血筋を熱く確認したのはついこの間のことだ。海を越え、日本にも同じ民族の同胞が暮らしている。49
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「勝利のその日まで」闘い続ける
~大阪朝鮮学園補助金裁判控訴審不当判決~
藤永 壮·fbノート(2018年4月1日)
韓国のインターネット新聞『PRESSian』二〇一八年四月一日付に掲載された「오사카 조선학교의 운명은?:오사카 조선학교 보조금 재판 항소심 부당판결에 대하여(大阪朝鮮学校の運命は?:大阪朝鮮学校補助金裁判控訴審不当判決について)」の、日本語オリジナル原稿(一部修正)です。
数秒で終わった判決言い渡し
二〇一八年三月二〇日、大阪朝鮮学園が大阪府と大阪市を相手取り、補助金交付再開等を求めた裁判の控訴審において、大阪高等裁判所は朝鮮学園側の請求をすべて棄却する不当判決を言い渡した。
開廷後、裁判長は「本件控訴をいずれも棄却する。控訴費用は控訴人の負担とする」と判決主文を読み上げると、理由の説明などは一切行わないまま、陪席裁判官二名とともに逃げるように退廷したという。この間わずか数秒。日本の裁判では、主文を読み上げるだけの判決言い渡しもしばしばあるそうだが、それでも木で鼻を括ったようなあまりに侮辱的な仕打ちは、傍聴席を埋めた朝鮮学校の生徒、関係者や支援者などを激昂させた。
法的な争点はともかく、この補助金裁判で―また並行して進行中の朝鮮高級学校に「高校無償化」制度適用を求める裁判においても―朝鮮学校側が求めているのは、つまるところ民族教育の権利の認定である。朝鮮学校側は第一審、控訴審での審理を通じて、日本国憲法の条文などを根拠に、補助金不交付が朝鮮学校児童・生徒の学習権や民族教育を受ける権利を侵害していると主張してきた。しかし控訴審判決で大阪高裁は補助金不交付について、大阪府・大阪市が定めた交付要件を満たさないので交付しないだけであり、朝鮮学校の教育活動自体を規律し制限を加えるものではない、と突き放した。朝鮮学校に対して新たな交付要件を課し、助成制度から排除する差別政策を取っておきながら、これは民族教育を直接規制する措置ではないと居直ったのである。長年にわたって支給されてきた補助金の突然の停止により朝鮮学校の経営が苦境に陥ることなど、我関せずという冷酷な態度であった。
法を超える裁量権を行政に認めた判決
とくに今回の控訴審判決で最も問題があると指摘されているのが、地方自治体に法を超える裁量権を認めた点である。朝鮮学園側弁護団は、大阪府が朝鮮学校を標的として改悪した補助金交付要綱の内容が、その根拠となる私立学校振興助成法などの法律の規制を超えていると主張していた。すなわち、私立学校振興助成法の趣旨・目的は、修学上の経済的負担の軽減を図ることをもって子どもたちの学習権を保障するところにあるが、要綱改悪(特定の政治団体と一線を画すこと、政治指導者の肖像画を教室から外すこと、などのいわゆる「四要件」追加)は学校と特定の政治団体(朝鮮総聯)との関係を理由に交付要件を厳格化するものであり、振興助成法が定める学校への規制(学校法人に対する質問・検査の実施、入学者数是正命令、予算の変更勧告など)に比べて過度の規制となっている。これは振興助成法の趣旨・目的に反して子どもの学習権を侵害しており、裁量権の逸脱、濫用にあたるので無効である、というのが朝鮮学園側弁護団の主張であった。
しかし大阪高裁は、朝鮮学園は補助金交付を求める具体的権利や法的地位を持っていないので、補助金交付要件を定めるという大阪府の裁量権行使は制限、禁止されないとして、朝鮮学園側の主張を退けた。つまり地方自治体の補助金行政においては、法律を超える要件を任意に設定しても構わないという理屈になり、行政に広範な裁量権を認めることで、行政が政治的理由をもって学校の教育内容に干渉することを容認したのである。(大阪高裁の論理では、補助金を支給しないだけであって、かりに朝鮮学校が財政難に瀕したとしても、学校の教育活動に干渉しているわけではないので妨げないということになるのだが。)
一方、大阪市補助金について、朝鮮学園側は、(1)大阪市補助金は本来、独自の制度であって、大阪府補助金不交付は大阪市補助金不交付の理由にならない、(2)補助金不交付を決定してから要綱を改定するなど、重大な行政手続き違反がある、と主張してきた。しかし事実関係があまりにも明白なこれらの主張も、不明瞭な理由で退けられたのである。
顧みるに、第一審判決は朝鮮学校の子どもたちの学ぶ権利や、民族教育の意義などには一切触れず、ひたすら大阪府・大阪市側の主張をなぞるものであった。とくに大阪府要綱に追加された「四要件」は明らかに朝鮮学校を標的とする政治的意図をもって定められたにもかかわらず、第一審判決は被告大阪府ですら主張していない行政の「裁量の範囲内」との判断を示して「四要件」の設定を擁護していた。控訴審判決は、行政裁量という「魔法の杖」をもって朝鮮学校差別を正当化する論理をいっそう強固にしたと言える。このような大阪高裁判決の姿勢を評して、判決日夕方に開かれた報告集会で弁護士の一人は、第一審が朝鮮学園側の提示した論点を避けつつ被告(大阪府・大阪市)勝訴の判断を下したのに対し、控訴審ではすべての論点に触れながら、これを負かしてやろうという内容であり、その意味で第一審よりさらに悪質だと述べた。
不当判決が意味するもの
ところで行政裁量権の広狭は「高校無償化」裁判でも主要な争点となっている。朝鮮高級学校を、「高校無償化」制度適用の指定基準に「適合すると認めるに至らなかった」ことなどを理由として不指定処分にしたという文部科学大臣の決定について、文科大臣の裁量権を認めず、不指定処分を取り消して原告(朝鮮学園)全面勝訴の判断を下した大阪地裁判決に対し、広島地裁と東京地裁では文科大臣の広範な裁量権を認め、朝鮮学園や朝鮮学校生徒たちの訴えを退ける不当判決が言い渡されたのである。(三地域ではいずれも敗訴した側が控訴し、現在高裁で審理中である。)
大阪府内の朝鮮学校に対する大阪府の助成は一九七四年度にはじまり、とくに一九九五年度からは人件費を含む「教育に係る経常費的経費」へと補助対象が拡大されていた。(一方で、大阪市は一九九一年度より市内の朝鮮初中級学校に教具の整備などを対象とする補助金を交付している)大阪府が「経常費的経費」として補助金を交付してきたのは、在日朝鮮人の民族教育を受ける権利を認めたからではなく、朝鮮学校が「日本社会の構成員としての教育」を実施しているところに着目したからであった。当時の大阪府の担当者としては、保守勢力の反発から、民族教育の意義を正面から認めることが困難な中、朝鮮学校に財政支援を行う理屈に知恵を絞りながら、補助金制度をつくり上げていったのである。
このように日本国家からの助成がないまま、各地方自治体はその地域の事情に応じて、工夫しつつ朝鮮学校への補助金制度を創設していった。そのため制度の内容は地域によって違いがあり、実に多様なものとなっている。こうして朝鮮学校の所在した二九都道府県すべてが一九九七年までに補助金の支給をはじめていたのだが、「高校無償化」制度をめぐって日本政府が朝鮮高級学校への差別的な姿勢を露わにし、とくに文科省が二〇一六年三月二九日、朝鮮学校へ補助金を交付してきた都道府県知事あてに、事実上その見直しを求める通知を送付したことによって、二〇一六年度の補助金交付は一三道府県にまで減少した。地域ごとの事情を考慮し実績を積み重ねてきた地方自治体による朝鮮学校への助成制度が危機に瀕していることは、朝鮮学校の財政を逼迫させるという次元にとどまらず、民族教育そのものの意義が完全に否定されつつあることを示しており、断じて放置できない問題である。
「勝利のその日まで」
さて判決報告集会では、大阪朝鮮学園理事長、朝鮮学校のオモニたち、在学生、卒業生、教員らの当事者はもちろん、弁護団や日本人支援者が一様に、不当判決に屈することなく最後まで闘い抜く決意を述べた。また韓国からは「ウリハッキョと子どもたちを守る市民の会」の孫美姫共同代表が参加し、力強い連帯のアピールを読み上げた。
判決報告集会では、オモニ会の会長たちが、最後まで闘い抜く決意を表明。
実は判決に先立つ三月一二日に、大阪の朝鮮学校支援運動で中心的な役割を担っていた大村淳・城北ハッキョを支える会代表が病没されたため、控訴審判決は関係者にとって、大きな悲しみの中で迎えたものでもあった。報告集会は、補助金裁判第一審の不当判決を機につくられた「勝利のその日まで」という歌を、参加者全員で歌って締めくくられた。みなが大村代表の霊前に、まさしく「勝利のその日まで」闘い続ける決意を新たにしたのである。49
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民族教育権関連年表 -朝鮮学校を中心に
1945.09 | 在日朝鮮人の民族教育、「国語講習所」の形態で始まる。 |
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1948.01.24 | 文部省学校教育局長、「朝鮮人設立学校の取扱について」(朝鮮人学校の閉鎖を求める内容)を各都道府県知事に通達 |
1948.04.24 | 4・24教育闘争 |
1949.09.08 | 在日本朝鮮人連盟(1945.10.15結成)解散命令 |
1949.10.19 | 朝鮮人学校閉鎖命令 |
1953.05.18 | 京都府、朝鮮学校を各種学校として認可(以降、他府県も認可していき、1975年には全国で認可される) |
1955.04 | 東京都、朝鮮人学校を各種学校として認可 |
1965.12.28 | 文部省事務次官通達 -「朝鮮人のみを収容する教育施設の取り扱いについて」 -「日本国に居住する大韓民国国民の法的地位及び待遇に関する日本国と大韓民国との間の協定における教育関係事項の実施について」 |
1967~72 | 外国人学校法案策動 |
1968.04.17 | 朝鮮大学校が法人認可獲得 |
1989 | 日本放送協会主催のNHK合唱コンクールへの朝鮮学校の正式参加が認定される。 |
1991.03 | 全国高等学校野球部連盟(高野連)、外国人学校の高校野球大会への参加承認。 |
1992.10 | 高体連(全国高校体育連盟)問題、日弁連が人権侵害だとして、是正を勧告 |
1994.03 | 高体連、各種学校にも同連盟主催の大会参加承認を決定。 |
1994.04 | JR各社、通学定期運賃の割引率格差を是正。1条校と専修学校、各種学校との格差がなくなる。 |
1969.09 | 川崎市立看護短期大学が朝鮮高級学校卒業生の受験資格認定を決定。これを前後にして、大阪府立看護大、大阪府立医療技術短大、広島県立保健福祉大も認定したことが判明。この後、京都府立医療科大学医療技術短大、京都市立看護短大も1998年入学生より認定。 |
1997 | 全国中学校体育連盟(中連盟)主催の大会にも朝鮮学校生の参加が可能となる。 |
1997.04 | 大阪府の教育関係者、父母、生徒代表、民族教育の差別是正要求の20万人署名を小杉隆文部大臣に直接手渡す。 |
1998.02 | 朝鮮人学校の資格助成問題に関する日弁連勧告。内閣総理大臣、文部大臣あてに、重大な人権侵害だと是正を勧告、衆参国会議長、国公私立大学長に是正要望書提出。 |
1998.06 | 国連子どもの権利条約委員会、処遇差別是正を日本政府に勧告 |
1998.08 | 京都大学大学院理学研究科、朝鮮大学校卒業生の受験認める(京大大学院ではこれに続き、教育学研究科、経済学研究科、文学研究科、法学研究科、人間・境研究科が門戸開放を打ち出す)。 |
1998.09 | 朝鮮大学校卒業生、京大大学院理学研究科合格 |
1998.11 | 国連自由規約委員会、朝鮮学校待遇について日本政府に対し懸念表明 |
1999.01 | 九州大学大学院・比較社会文化研究科が朝鮮大学校卒業生の受験を認める |
1999.07.08 | 外国人大学の卒業生に対する大学院への受験資格認定、及び、大学受験資格格要件の緩和による外国人中学校卒業生に対する大検受験資格認定の方針が出される。 |
2000.12 | 全国高等学校サッカー選手権大会に、大阪府代表として大阪朝高初参加 |
2001.03 | 人種差別撤廃条約委員会、受験資格、チマチョゴリ事件等について勧告 |
2001.08 | 社会権規約委員会、公的助成、受験資格等の差別是正を勧告 |
2002.04 | 大学入試センター試験の外国語科目として、英、仏、独、中の他に朝鮮語を設ける。 |
2002.09.17 | 朝日首脳会談、ピョンヤン宣言発表、在日朝鮮人の地位に関する問題を国交正常化交渉において誠実に協議する事を宣言 |
2003.03 | 文科省、外国人学校中、欧米系学校を設置している法人だけ「特定公益増進法人」として認可。税制優遇を図る。 |
2003.02~07 | 国立大学受験資格を求める要請、署名運動広まる。 |
2003.09 | 外国人学校、民族教育を支える全国連絡会結成 |
2003.09.19 | 文科省『学校教育施行規則の一部改正等について』各国公私立大学、都道府県教育委員会に通知 国立大学入学資格の弾力化〃の対象となるカテゴリ3つに分岐 外国人学校のうち、朝鮮学校のみ学校単位で認めず個別審査を対象とする新たな民族差別を強化。 |
2003.12 | 石原東京都政、枝川朝鮮学校(東京第2初級学校)取り壊し裁判提訴 |
2003.12 | 全国高等学校ラグビー選手権大会(花園)へ大阪朝高初出場 |
2004.05.22 | 小泉総理再訪朝、第2回首脳会談にて、ピョンヤン宣言履行再確認。在日朝鮮人に対し差別しないと確認、合意 |
2014.08.16 | 「司法試験法第4条第1項第4号の規定により司法試験第1次試験を免除される者に関する規則」の一部を改正する省令が8月16日に交付され、朝鮮大学校出身者にも、1次試験を免除される道が開かれる。 |
2014.12 | 大阪朝高ラグビー部が2年連続で全国大会出場 |
2005.05 | 国連人権委特別報告官ドゥドゥ・ディエン氏が、日本における朝鮮学校に対する差別などの調査結果を「国別報告書」として国連に提出 |
2005.12 | 大阪朝高サッカー部、全国選手権大会2度目の出場、ベスト8入りを果たす |
2006.07 | 日本政府が「マンギョンボン92」号の入港禁止措置、朝鮮学校生徒と同胞達の祖国往来の道が遮断される 朝鮮学校児童・生徒に対する嫌がらせ、暴言、暴行事件が全国的範囲で頻発。朝教同中央委員長が記者会見、談話発表 |
2006.10.01 | 「中等教育実施60周年在日同胞大祝典」が大阪城公園・太陽の広場で近畿2府4県の同胞3万2千余人の参加のもと、盛大に行われる |
2006.11.4-5 | 朝鮮大学校創立50周年を記念する大会、公演、祝祭に卒業生、同胞ら約5千人が参加、改築された図書館、研究棟が披露される。 |
2007.01.26 | 「マンギョンボン92」号運航再開と民族教育に対する差別撤廃を要求する教同代表国会前緊急アピール行動 |
2007.01.28 | 大阪府警が「電磁的公正証書原本不実記載 同供用」を口実に滋賀朝鮮初級学校をはじめとする5ヶ所を強制捜索 |
2007.01.31 | 滋賀朝鮮初級学校講堂にて緊急糾弾集会、県下の同胞をはじめ他府県から駆けつけた同胞、日本市民ら400余人が参加 |
2007.03.03 | 「3・1人民蜂起88周年、日本当局の総聯と在日同胞に対する不当な政治弾圧と人権蹂躙行為に反対、糾弾する在日本朝鮮人中央大会」が東京・日比谷公園大音楽堂で行われ7千余人がデモ行進。同日、神戸・東遊園地においても近畿地方大会が行われ5千余人が集結 |
2007.03.08 | 「東京朝鮮第2初級学校土地問題裁判」で東京地裁が都と学校に和解を勧告 |
2007.03.15 | 東大阪市による不当な「大阪朝鮮高級学校運動場明け渡し裁判」第1回公判 |
2007.09 | 朝鮮大学校政治経済学部法律学科第1期生2名が新司法試験に合格、同学 科創立9年目の快挙 |
2008.03.24 | 日弁連が中華学校、朝鮮人学校に対する税制上の差別や朝鮮学校卒業生の大学入学資格認定における差別などが、これらの学校に通う生徒の学習権を侵害しているとして、内閣総理大臣、文部科学大臣、財務大臣あてに、 制度改正をもとめる勧告をおこなう |
2008.09.05 | 東大阪市による「大阪朝鮮高級学校運動場明け渡し裁判」第9回公判で大 阪地裁の裁判長が東大阪市と学校に和解協議を勧告 |
2008.09- | 中華学校、朝鮮人学校に対する税制上の差別是正,制度改正をもとめる「外国人学校の処遇改善を求める国会請願署名」10月まで36万筆。 「大阪朝鮮高級学校運動場明け渡し裁判」第10回公判、東大阪市と学校が 『和解勧告受諾』 |
2008.10.29 | 大阪朝高ラグビー部、全国選手権大会3位入賞 |
2010.01 | 高校無償化問題で鳩山首相「朝鮮学校除外」を示唆、 |
2010.02.26 | 朝鮮学校への差別なき速やかな無償化適用をもとめる政界、教育界、法曹界、言論出版、労働団体、市民団体等 各界階層の広範な運動展開される(2月~8月) |
2010.03.03 | 高校無償化問題で、衆議院文科委員会メンバー東京朝鮮中高級学校視察、社民党代表東京朝鮮中高級学校視察 |
2010.03.16 | 国連人種差別撤廃委員会(ジュネーブ)、対日審査の最終所見で高校無償化からの朝鮮学校除外に懸念、差別待遇の改善を勧告 |
2010.09.05 | 「日朝友好親善を深めるための第34回全国交流集会」盛岡・岩手教育会館 記念講演「繰り返される民族差別の歴史と開放を求めて(ヘイトクライム立法にふれて) 前田朗・東京造形大学教授特別報告「高校無償化制度の朝鮮学校への適用問題への取り組み」西沢清日朝学術交流協会副会長 3分科会(理論・教育実践・日朝友好連帯運動) |
2010.11.23 | 延坪島事件(朝鮮西海における軍事衝突) |
2010.11.30 | 文科省の申請に基づき、全国の朝鮮学校が申請書類を提出 |
2011.01.17 | 東京朝鮮学園が異議申し立て |
2011.02.04 | 高木文科相が東京朝鮮学園の異議申し立てに対し、不作為の理由を通知 |
2011.08.29 | 菅首相文科省に再審査指示 |
2011.10.02 | 「日朝友好親善を深めるための第35回全国交流集会」福岡・福岡県教育会館 記念講演「私と日朝運動」江口済三郎・東京都前中野区区議会議副議長 特別報告「福岡県日朝友好協会第四次訪朝団報告」北原守 3分科会(理論・教育実践・日朝友好連帯運動) |
2012.10.12 | 田中文部科朝鮮高校無償化適用問題「早く政治判断で決めるべき」と発言 |
2012.11.18 | 「第14回日本・朝鮮教育シンポジウム」 横浜・ワークピア横浜にて、「民族教育、昨日・今日・明日」のテーマで開催 |
2013.03.24 | 近畿地方の在日朝鮮人、日本市民約2,500人による集会とパレード「朝鮮学校への「高校無償化」適用、自治体補助金の再開・復活を求める『朝鮮学校ええじゃないか!春のモア・パレード』」 大阪で開催 |
2013.03.31 | 『朝鮮学校はずしにNO!すべての子どもたちに学ぶ権利を!3・31全国集会&パレード』が東京で開催され約7,500人の在日朝鮮人と日本市民が参加 |
2013.05.19 | 京都朝鮮初級学校(京都市伏見区小栗栖岩ヶ淵町14)新校舎(敷地総面積1万3千400坪、二階建)竣工式が校長をはじめとする教職員,児童、園児と卒業生,府下同胞と学父母、日本人士など1,000余人の参加のもと盛大に行なわれた。 |
2013.05.21 | 国連社会権規約委員会は、国連の社会権規約(経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約)の締約国を対象に、遵守状況について定期的に審査し所見をまとめているが、今回日本国に対する総括所見を発表。「高校無償化」制度からの朝鮮学校排除は差別であると懸念を示し、「高校無償化」制度を朝鮮学校に通う子どもたちにまで広げるよう日本国に求めた。 |
2013.10.07 | 京都朝鮮第1初級学校(当時)の周辺で「在日特権を許さない市民の会(在特会)」メンバーらが街宣活動し、差別的な発言を繰り返して授業を妨害した事件の訴訟で、京都地裁は、在特会の「街宣活動」は「(日本も加入する)人種差別撤廃条約」で禁止した人種差別に当たり、違法だ」とし、学校周辺での街宣活動の禁止と、1226万円の損害賠償の支払いを命じる判決を下した。 |
2013.10.08 | 大阪朝鮮高校の李健太選手(高3)が「国体」ボクシング競技少年の部ライト級で優勝。2012年「選抜」「インターハイ」「国体」、2013年の「選抜」「インターハイ」に続き、高校ボクシングの6冠の偉業を達成。史上5人目、朝鮮高校の生徒としては初の快挙。 |
2014.01.19 | 「高校無償化」制度から朝鮮学校だけが除外されている問題で大阪、愛知、広島に続き九州でも国賠訴訟が提起された。原告となっているのは、九州朝鮮中高級学校の生徒と制度の適用対象となっていた2010年度以降の卒業生たち。 |
2014.09.30 | 神戸朝高の金梨月さん(1年)の作品「私のカバン」が、読売新聞社、大阪経済大学主催の「17歳からのメッセージ」で最優秀賞(グランプリ)に輝いた。コンテストには、全国から27176通の応募があった。 |
2014.12.20 | 「朝鮮学園を支援する全国ネットワーク」の全国交流会が12月20日、東京都千代田区の連合会館で行われ、日本各地から支援団体代表や同胞80余人が参加した。 |
2015.02.21 | 全国統一行動の集大成として「2・21全国集会」が、東京中高で行われた。全国朝鮮高級学校校長会、朝鮮学校全国オモニ会連絡会、全国朝鮮高級学校学生連絡会、全国朝鮮高級学校卒業生連絡会、日朝学術教育交流協会、朝鮮学園を支援する全国ネットワーク、「高校無償化」からの朝鮮学校排除に反対する連絡会から成る実行委員会が主催し、日本各地の裁判支援団体、同胞ら1200余人が参加した。 |
2015.11.08 | 第95回全国高校ラグビー大会東京都予選・第2地区決勝戦が8日に東京の秩父宮ラグビー場で行われ、東京朝高が29-10で明大中野を下し、初優勝を果たした。 |
2016.02.13 | 全国一斉行動の集大成として「2・13全国集会」が大阪(大阪コミュニテーセンター)で開催された。その後東京をはじめ、各地で全国行動に連帯する集会が開催された。 |
2016.03.29 | 文科省、朝鮮学校を認可している28都道府県に「朝鮮学校に係る補助金交付に関する留意点について(通知)」を発出。 |
出所:第19回日朝教育シンポジウム配布資料集
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