夢膨らむ! 東京チェーサム新校舎建設:歴代役員懇談会に参加して
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金柱宇・第14代校長 教育会顧問
大きく羽ばたかせる
素晴らしい学びの舎に
東京朝鮮第三初級学校の旧校舎が取り壊され、いよいよ新校舎建設がはじまりました。今年の一二月には完成するようです。どんな校舎が建つのか、とても楽しみです。
先日、東京中高内の仮校舎を訪れ、康哲敏校長から新校舎の完成図を見せてもらったのですが、狭い敷地を目いっぱい使った、素晴らしい設計でした。
それまで私の頭にあった校舎のイメージは、教室を四角く仕切っただけの単純でマッチ箱のような建物なのですが、新校舎はそれとはまったく違う、とても斬新なものです。
一階には、教員室、校長室、事務室など、教職員の部屋があり、男女の更衣室と保健室などもそろっています。特徴的なのは語らいのマダンという談話室なのですが、ここは、先生はもちろん父母や理事たちもそれぞれ自由に語らい、くつろげる場だと言います。このように一階には、ソンセンニム[先生]たちが仕事のしやすい環境が整っています。
音楽室は他の教室より少し広めにできています。その隣にある倉庫は楽器や学芸会で使われる大道具も収納できるよう、大きく作られています。
一階にはまた、教室二個分に相当する大会議室とその隣に厨房と倉庫があります。そこはいくいくは幼稚班の教室や施設にする予定のようです。しかし、まだ先の話で、それまでは小規模の集会や舞踊部の練習場として使われるようです。
玄関に入ってすぐ目につくのは、吹き抜けで開放感のある多目的ホールです。この広場は三〇〇人を収容できるスペースがあり、入学式や卒業式はもちろん、バザーや夜会といろいろな行事を行えます。朝礼や業間体操、雨の日には体育の授業もできます。普段、この空間は子どもたちの楽しい遊び場になり、休み時間ともなればみんな飛び出してきて、明るく元気な声をワンワン響きわたらせることになるでしょう。
またここは、ミニバスケットボールのラインが画れてあります。旧校舎の屋上にもバスケットボールのコートがありましたが、そこで練習したチェーサムのバスケット部は全国大会で幾度も優勝し、強豪チームとして、その名をとどろかせました。このチームを少年団指導員時代から育て上げたのが康校長です。このバスケットコートのラインにはチェーサムのバスケ部を引き続き輝かせようとする想いが込められているようです。
野外には鉄棒や滑り台、砂場まで備った児童広場があります。ここは幼稚班の設置を見越した広場ですが、それまでは低学年の楽しい遊び場となります。野外と言っても屋根があるので、雨が降っても濡れることなく、そこではトンボたちが集い焼肉パーティーもできるそうです。
吹き抜けで、一階とつながる二階には、理科図工室と図書館があり、明るい東側に低学年、日当たりのよい南側には高学年と、六つの教室がうまく配列されています。変形的な敷地にあわせたので、教室も変形しているのですが、それがまた新たな空間を生み出し、子どもたちの良いたまり場になりそうです。また、廊下は広くとってあり、扉を開けば教室と一体となる、開放的な空間が生まれ、幅広い授業ができるようになっています。他に図書館もあって、ここは子どもたちが本を読んだり、楽しく語りあえる場になります。
このように二階は子どもたちがのびのびと楽しく学べるような造りになっています。
この新校舎では私の思いもつかない、斬新な教育がなされ、これからの未来を切り開く素晴らしい人材が巣立っていくことでしょう。
屋上にはフットサルコートのラインが描かれた人工芝の運動場があります。その広さは一六〇坪あって、一八四坪あった前の運動場には及ばぬものの、さほど遜色はありません。つまり運動場がなくなったのではなく、屋上に移ったと思えばいいのです。
フットサルコートの外に空いたスペースは、理科授業用の農園とか、花壇として使われムダがありません。
旧校舎のときは、運動場に行くのにいちいち靴を履きかえ、車が行き来する道路を渡らなくてはいけなかったのですが、もうその必要もなくなりました。コートは網のフェンスで囲まれているので、思いっきりボールを蹴ることもできます。この立派な施設でチェーサム出身のJリーガー安英学のような素晴らしい選手がまた生まれるかもしれません。
そしてここには照明までついていているので、夜間に貸し出しもできて、少しばかりの収入を得られるというではありませんか。本当によく考えたものです。
新校舎完成図を見ていると、いろいろなイメージが湧いてきて、夢はどんどん膨らんでいきます。本当に楽しみです。
新校舎は土地の形にあわせ、ナルゲ(つばさ)をデザインしたといいます。きっと、この新校舎はチェーサムの子どもたちを大きく羽ばたかせる素晴らしい学びの舎になることでしょう。
湧き出るように育つ若い力
新しい時代のはじまりを実感
去る一月二二日、池袋のメトロポリタンホテルで、東京朝鮮第三初級学校の歴代役員懇談会が開かれました。この懇談会は、学校の新校舎建設をはじめるにあたり、歴代校長と教育会役員たちに、そのことを説明して理解と支援をいただくために催されたのです。
一四代校長を務めた私にもお呼びがかかり、喜んで参加しました。
会がはじまる直前に会場に着いて、急ぎ受付をすませ、名札を付けようとしたら、目の前に背の高い若者が待っていたとばかりに歩み寄ってきて、「잘 오셨습니다.나는 김창수라고 합니다.잘 부탁하겠습니다.[ようこそいらっしゃいました。私はキム・チャンと申します。よろしくお願いします]」と、いきなり挨拶してきました。
えっ、この若者が新しく教育会の理事長になったキム・チャンストンムかと思い、すぐに私も「잘 부탁하겠습니다.오늘은 초대고맙습니다[よろしくお願いします。今日は招待してくれてありがとうございます]」と、手を握り挨拶を返しました。
この新しい理事長とは初対面です。実は数日前、懇談会の案内状の差出人に「김창수[キム・チャンス]」とあったので、「誰かな?」と気になり、教育会の洪先生に電話で聞いてみたのですが、地方から来た方なので、私の知らない方だといわれました。そんな人にいきなり親しげにあいさつされたので、私はびっくりして少しとまどってしまいました。
しかし、このトンムは、私のことを知っているような素振りでした。それで私は、「理事長は、チェーサムの卒業生ではないようだけど、どこから来たの?」と聞いてみました。するとなんと、「静岡です」というではありませんか。私の書いた「静岡チョジュン[初中]のはじまり」も読んだと言います。なるほど、それでこのトンムは受付で待ち構え、私の名札を見るなり駆けつけてて来たのかと、納得しました。
「で、静岡のどこにいたの?」
「田町にいました」
「それじゃー卞長春をしっているね」
「はい、その人の同級生の崔基徳は、私のおじさんになります」
「エーッ、あの崔基徳のカァー」
私はその名前を聞いて、絶句してしまいました。その崔基徳という子は、私が静岡チョジュン新任の時、中学一年生で、手の付けられない問題児でした。その子の名前は「静岡チョジンのはじまり」にも出てきます。
*『朝鮮学校のある風景』30号217頁と220頁
五五年も前の懐かしい名前を聞いて、私はもう一度金理事長の顔を見つめてしまいました。そういえば、崔基徳と金理事長、奥眼で頬骨の張っているところがなんとなく似ているような気がします。私はこの新しい理事長にすごく親近感が湧いてきました。チェーサムと静岡がまたここで繋がったと思うと、なんか嬉しくなりました。
しかし、いつの間にこんな頼もしい理事長が生まれたのだろう。
たしか、一年前までは教育会の新しい会長が決まらず、理事会の活動も低調になってしまったと、聞いていました。それでチェーサムのことをずっと心配していたのですが、突然、目の前にこんな頼もしい理事長が現れたので、驚きました。しかし、喜びの方が数倍大きかったです。
金理事長とは、もっと話をしたかったのですが、会がはじまりますからと、金明玉先生に促され、手をひかれるように二番テーブルに案内されました。
会場には、一三代校長から二〇代まで、八代にわたる校長のうち、六名が参加し、教育会の方も安英王会長から金昌洙理事長まで八代の会長が勢ぞろいし、学区五支部の委員長たちとそうそうたるメンバーが顔をそろえて、歴代役員懇談会としては、盛大な催しとなりました。
会場は、たくさんの人で湧き返り、入りきれない人が入り口まで溢れ出ていました。その大半が若者たちで、学校のソンセンニム[先生]と若い理事、建設委員会の役員たちなのです。この会を盛り上げているのは、私たちを招待した、この若者たちです。
しかし、チェーサムの理事と言えば、たいがいが卒業生で、私の知らない人はあまりいないはずなのに、よくよく見まわしても初めて見る人たちの方が多いです。
私は一二年前に定年退職し、学校を離れていましたが、その間に世代が代わり、私の知らないところで、金理事長をはじめ若い人材がこれだけ多く育っていたのです。
会の冒頭、あいさつに立たれた総連東京都本部の高徳羽委員長は「新校舎建設にあたり歴代の校長、教育会会長がこのように集い、盛大な懇談会を催すというのは画期的だ。第三学校管下の同胞、父母たちの民族愛、愛国心の高さを感じる」と、言われました。
そうです。何代にもわたる歴代の校長、会長が若い理事たちと一堂に介し、語りあうというのは、他では聞いたことがありません。それだけチェーサムのあるこの地域は民族教育にたいする熱意が高く、また母校を愛する多くの人たちの強い思いがあるのです。この地域では、次から次へと、湧き出るように若い力が育ってるのです。
歴代役員の後に紹介され、演壇に登った新しい理事や建設委員、そしてアボジ会の若者たちは皆明るく、そして力強く、自信に溢れ、みるからに頼もしい限りです。
この若者たちを見ていると、チェーサムの新しい時代のはじまりを感じました。
これからは新しいこの人たちが先進的な教育で、さらに民族教育を発展させていくのです。
今回の懇談会は、歴代役員たちが守り育ててきた民族教育を新しい役員たちが受け継いでいく「引き継ぎ式」のようでした。(2019・2)54
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