朝鮮学校の良さ発信して連帯広げ、世論で敗訴覆そう
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負の歴史に向き合ってこそ
築かれる信頼関係
金話が戻りますが、李哲さんはいつ知られたのですか?
長崎私が大学に入学した時に、李哲さんが囚われて、政治犯になりました。李さんのお姉さんがクリスチャンで、教会を通じて弟が無実の罪で囚われたと訴えていました。私が通っていた聖公会の牧師さんがそれを知って、私も大学一年の時から関わるようになりました。最初は、政治犯が何で生まれるのかもわからないし、朴正煕政権がどういう政権なのかも知らなくて。あの時は金大中大統領も囚われていましたから、みんなで、名古屋の栄でハンガーストライキをしたり、署名を集めたりしました。
その後生野の保育園で働いている時に、李哲さん家族が生野に引っ越してこられて、私が最初のお子さんを担任しました。本当に感動しました。ずっと救援活動をしていたんですと言って、李哲さんの書かれた本『再会』を見せて抱き合って喜びました。
金それが在日朝鮮人との出会いですか?
長崎そうですね。李哲さんの救援活動を通じて、在日の方が置かれている状況だとか、特に分断の中で、在日の人がどちらの国からも捨てられるようになるということを知って、それがすごく切なかったです。38度線の境界線も日本が植民地化しなければなかったし、逆に言えば日本が分断されても仕方がなかったのに。朝鮮戦争で、かつて植民地にしていた日本が、武器を売ることで経済復興したことを考えると、日本人として辛かったです。
金そういうことを学ぶことが辛くはなかったですか?
長崎最初の頃は辛かったですね。どう償えばいいんだろうと。立場を替えてみたときに、自分の名前を長崎由美子から趙○○と変えさせられたりとか、いろんなことがあったら本当につらいよなと思いました。日本はよく土下座外交という言葉を使いますよね、何度謝罪しても向こうは許さない、土下座したって許さないと。土下座なんて誰もしていないんですけどね、日本は。もちろん日本人は許せないという感情を持っていて何か言っても日本人ということでノーと言われる方もいると思うんですが、私自身が体験した中で言うと、何回詫びても詫びきれないものがあるから、私としては詫びきれない思いを今、何をするかということに変えていくしかないと思っています。そういう思いで接すると、「長崎さんは日本人でしょ、日本ってこんなことしてきたじゃないですか!」というようなことを言う人は誰もいないんですよね。私が負い目、辛さを持っていることに寄り添ってくれるというか。逆に、あなたと同じ立場の日本人だったとしたら、どうしていたかわからないと、言ってくださる方もいて。
以前にも関東大震災の時のおばあちゃんの話を書いたことがあるんですが、私のおばあちゃんが、みんなが「朝鮮人が殺しに来る」と言っても最後まで「それは嘘だ」と言ったという話をした時に、朝鮮初級学校の校長先生が、自分のおじいちゃんの友達も自警団に追いかけられた時、日本人に助けられて救われたとおっしゃって。関係が浅い時には「朝鮮人やろ」「日本人やろ」となるけれど、関係が深くなって個人としての関りが生まれると、負い目というのが、「許すけれども忘れない」「許されても忘れてはならない」というものになると思います。
金今の若い人たちを見ながら、「世代も変わったし、知らない」とそっぽを向きたくなるんだろうなと思います。
長崎若い世代の人たちとはいきなり重たい、自分たちが責められる話題から入るのはしんどいと思います。自分が生まれる前の時代のことで、自分自身がしたことではないし、それを繰り返さないためにどうするかということだと思います。今回、金福童ハルモニは、「こんなひどい目に合わせた日本への恨みを忘れないというのではなくて、二度と自分が味わったような苦しみを皆にしてほしくない、戦争によって」とおっしゃっていました。だから在日の朝鮮学校の子どもたちに自分がしたような悲しみを味合わせないために学んでほしいとおっしゃっていました。手をつなごう、負の歴史で日本人を裁こうとして言っているのではなくて、歴史を繰り返さないようにしようと。若い世代にとっては今韓流ブームもあり、Kポップもあり、朝鮮市場はコリアタウンになって休日は歩けないほどの人であふれます。韓国の文化が素敵だなというところから入って、韓国はおしゃれ、肌がきれいでコスメってどんなの使うの? というところから入って、もう一歩踏み出したときに、自分のおじいちゃんおばあちゃんの世代にあったことを知った上でかかわるのと、負の遺産はすべて放り投げてしまって、今が楽しいというだけの関係でいるのとでは、互いへの信頼感が違うと思うのです。Kポップがあふれかえっていても、戦後補償の問題、「慰安婦」問題になると、過ぎたことではないかと扉を閉ざしてしまう。そこが問題だと思うんですよね。
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