朝鮮学校差別を司法が追認、東京高裁・唖然!卑怯な判決!
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101号法廷=東京高裁・唖然!卑怯な判決!
【10月30日・火曜日】
控訴が棄却された。
東京高裁に裁判開始四五分前に着く。手にした傍聴抽選券は「691」、九〇の傍聴席に対して八八九人が列をなした。
先月の大阪での裁判では当たり番号を大阪朝高生に譲ったが、今回はハズレ、裁判所を出ようとしたら、「『風景』に書いてください」と、学校関係者から「888」の当たり番号を得て、101号法廷へ。傍聴席に初めて座った。
顔見知りのオモニ会の女性たちが厳しい顔で、裁判長を凝視していた。
開廷二分前、テレビ用撮影が終わると、裁判長が「…棄却」を伝える。
男女の弁護士が巻物のようなものをもって退廷。表情が険しい。裁判所の前で、勝訴の吉報を祈るように待っている生徒、教職員、保護者、日本人支援者たちが大きく落胆するであ ろう姿が目に浮かんだ。
判決理由を述べているのだろう、早口だ、何を言っているのか聞き取れない。「棄却」との判決に、聞くことを拒んでいるのかも知れない。
「速やかに退廷してください」の声に、傍聴席から心が締め付けられるような声が次々に飛ぶ。
「卑怯者」、「恥を知れ」、恥ずかしくないのか」、「かっこわる」、
再び、「速やかに…」の声、「そとで待っている人にどない言ったら…」、「納得できません」。
呆然として席を立てない。起訴して四年八か月…、「ノムハムニダ」、あまりにも惨い。足取りが重い。廊下で金明俊監督と目があうが、互いに言葉を発するこどできなかった。
裁判所の前から「無償化」連絡会の長谷川代表の声が聞こえてくる。マイクを握った彼にいつもの温和な表情はない。怒っている。今まで見たことのない厳しい表情で、「もしかしたら司法に良心がるかもしれないと…」、「子どもたちへの不当な事件権侵害、差別…」、「…不当判決に負けず…」と、不当判決を糾し、最後まで戦い抜く決意を述べていた。(この項=金日宇・「記録する会」)
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裁判所前=怒号や涙の時期は過ぎた
午後四時過ぎ。
「不当判決」「朝鮮学校差別を司法が追認」という紙を掲げて二人の弁護士が東京高等裁判所から出てきた。
記者のシャッター音は一審の時ほど多くは無かった。誰も声をあげなかった。周辺をよどんだ空気が覆っているような気がした。
一審の時は女性の叫びのような泣き声が響き、「負けないぞ」というシュプレヒコールが起こった。四月の名古屋高等裁判所の時は、しばらくあっけにとられたような沈黙が走った。しかしこの時の空気は違った。
無償化裁判では、広島の一審で敗訴、大阪の一審で勝訴したものの二審で敗訴、そして今回東京で一審に続いて二審で敗訴。大阪の補助金裁判でも、一審、二審と敗訴が続いている。裁判の厳しさは充分身にしみている。
今回の判決については、裁判官が真実に目を向けているという前評判に淡い希望を抱く声もあったが、理屈の通らない「判決理由」で無惨に踏みにじられた。「判決だけ言って逃げた方がまだ良かった。読み上げられる判決理由を聞きながら日本に未来は無いと思った」という日本の支援者もいた。
「敗訴」の紙を見た瞬間、どうしたものかという思いが、大勢の頭をもたげたように見えた。もはや怒号や涙の段階ではなかった。
朝鮮学校は深刻な財政難に陥っている。助成金の支給は喫緊の課題だ。お金が大切なのではないとは言わない。しかしその金で守ろうとしているのは、在日朝鮮人が自分たちの言葉と歴史を学び、仲間を育む朝鮮学校で、そこに支給される助成金を得ることは、朝鮮人として尊厳をもって生きる権利を得ることなのだ。これは、朝鮮学校の存亡を、朝鮮人としての尊厳を掛けた第二の4.24闘争だ。深い怒りと、えぐられるような悔しさと、何があっても守り通すのだという切実な思いを胸に、今こそは皆で知恵を出し合って新たな戦術を考える時だ。
そんなことを考えていると、少し離れた所で、カメラマンたちが泣いている女子生徒にレンズを向けているのが見えて無性に腹が立った。女子生徒の写真を何に使うというのだろうか? その写真で在日朝鮮人のどんなイメージを伝えようというのだろうか? マスコミには問題の本質をもう一度しっかりと勉強して、慎重に報じてほしいと切に思う。(この項=金淑子・「記録する会」)
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報告集会=法廷の空気を変える後押しを
PM七時。
「朝鮮学校の子どもたちに笑顔を!! 10・30東京朝鮮高校生『無償化』裁判高裁判決集会」が東京北区の北とぴあで行われ、東京朝鮮中高級学校生徒や朝鮮大学生、保護者、在日同胞、日本や韓国の支援者が参加した。
今回の判決で一番多くの涙を流したのは、弁護団だったかも知れない。
「真実に迫っていたはずだった」(李春熙弁護士)、「ここまで感触のいい裁判は無いと思っていた。勝てるな、という感触だった。」(尾渡雄一朗弁護士)
裁判はすこぶる順調に進んでいた。ところが最後にひっくり返された。
「自分にこんな感情が込み上げるのかと思ったくらい、悔しいです」(康仙華弁護士)「怒りと、軽蔑ですね。はっきり言って。自分がやってきたこととまったく違うことを書いていて、恥ずかしくないのかと思う」(師岡康子弁護士)。
多くの弁護士が涙で言葉を詰まらせた。
しかし最後には「私たちがやらなくちゃいけないのは、ここでくよくよすることではありません。ここで立ち上がって、ではどうすれば前を向けるのか、そのうねりを作っていくために、弁護士は弁護士として何ができるのかを、考えて作っていくこと」(松原拓郎弁護士)と心を新たにし、「4.24の時代、私たちの先輩も、くじけたとしても必ず立ち上がり、希望を忘れず、健全な怒りを持ってたたかっていたと思う。社会が、朝鮮学校に勝たせなきゃいけないじゃないか、という雰囲気を作らなきゃ、絶対に最高裁では勝てない。これは私からのお願いです」(李春熙弁護士)と、同胞や日本の支援者、韓国の支援者たちが一丸となって世論に働きかけることを呼びかけた。
東京朝鮮中高級学校の高級部三年生が歌とメッセージでは、生徒代表の「後輩たちに同じ思いをさせたくないという先輩の言葉を聞いてきたが、同じことを後輩たちに言わなきゃいけなくなった」という言葉に胸が痛んだ。文科省前に立ってシュプレヒコールを叫び、学園祭では訪れた人々に「無償化」を解説し、裁判所に足を運ぶ、高校生活とは思えない日常をいつまで続けさせるのか。「なんですか? 今日の判決は!」(オモニ会直前会長)「子どもたちへの民族差別をいつまで続けるのか」(オモニ会長)という怒りに、心の中で何度も「そうだ!」と叫んでいた。
大阪や広島、愛知、九州から駆けつけた同志たちの「一緒に戦おう」という言葉は温かくて、心強かった。海を渡って支援してくれるモンダンヨンピルは、訴訟費用を補って共に戦うのだと二五〇万円をカンパしてくれた。
二階の席にいた私の周りには二〇代の若い同胞が多かった。発言者の言葉に真剣な面持ちで聞き入り、大きな拍手を送っている姿がたくましかった。会場に集まった一千百人の心が一つになって前を向いていた。
今一度「力のある人は力を、知恵のある人は知恵を、金のある人は金を」出し合って、一人ひとりが小さなことからこつこつと法廷の空気を変える後押しをして行かなくてはいけない。(この項=金淑子)
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懇親会の場で=4.24と共に闘争を語る日が…
「報告会」の後、弁護団、韓国と地方からの支援者を交え、東京、大阪、広島のオモニ会、保護者たちによる懇親と決起の場がもたれた。参加者たちは、それぞれの立場から、それぞれの率直な思いを語った。
〇憤り…広島は幼稚園から高校まで一緒に学んでいる。園児を送る二〇代の若いオモニたちも付いてきてくれている。オモニのパワーと力を結集して広島に帰って頑張る。
〇前月二七日、大阪もすごく悔しい思いをした。勝てると希望を持ってきたが…権利として獲得するまで絶対に負けへん、負けられない。
〇東京の弁護団に敬意を、論理的には妥当なのに、悔しくて無念。諦めたら負けである。
〇最高裁まで頑張るぞ。巨大な敵と戦っている、一九四八年の壁が立ちふさがっている。このたたかいは、4.24闘争の延長線上にある。
〇是非とも巻き返したい。いい写真を撮りたかった…最後に笑えればいい。
〇原告として、卒業生として悔しい判決だ。涙が止まらなかった。後輩たちにこういう思いをさせたくない、戦わせたくない、高校生らしく…。原告、卒業生としてこれからもできることを…。
〇負けはしたが…日本に朝鮮学校がなぜ誕生し、今もあり、学生たちが学んでいるのか、日本社会にわからせなければならない。これからもウリハッキョを守っていくという気持ちを強くした。
〇親とか後輩が否定されるのをみて悔しい。歴史を変える大切な裁判だ。試練が続くと思うが、4.24精神は生きている。今年70周年を迎える。勝って後世に語れるよう頑張っていく。
〇たまらない。胸が詰まる。
〇友達一〇人を「朝鮮学校いいね」と、つくっていったら来年の今頃は勝っている。
〇メディアのだらしなさが大きい。
〇みんなに喜んでもらいたかった。裁判官、まともな理由があると思ったら…本当に人間として幻滅しか、恥ずかしげもなく…。
〇こんなシーンを撮りたくかった。心ひとつにしてこれからも私たちの姿を記録に残したいと思う。
〇国交正常化をしなくては…新潟から船に乗って平壌に行きたい。
〇一審では号泣したが、二審ではなぜか冷静に…裁判頼りすぎず、幅広い運動を…。
〇ひっくり返さなくては…頑張ります。
〇4.24とともに後世は、無償化闘争を語る日が…勝利はわれわれのものです。
〇弁護団の皆さん、泣かないで下さい。話を聞いて勇気と希望が…みんなの力を合わせて、勝って東京ドームを借り切って焼肉しましょう。(この項=金日宇)52
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