子どもたちを司法が見捨てた!大阪控訴審・不当判決に呆然
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【9月27日・水曜日】
大阪裁判控訴審の結果を、道路をはさんだ反対側の少し高台で見守った。
裁判所の前は、カメラを構えたマスコミであふれていた。
「朝鮮学校にも学ぶ権利を…」、「力強い連帯、最後までたたかって…」、「オモニたちは放棄しません」、「子どもたちの明るい笑顔がオンマの力…」
ウリマルと日本語で書かれたいくつもの大きな横断幕が風になびき、裁判所を見つめる人びとの顔は一応に緊張していた。
長い、沈黙の時間が流れていた。
裁判所の前で、なにかを広げているが、読み取れない。ざわつきは伝わってくる。カメラマンたちが右に左に動いている。
歓声がない。敗訴のようだ。
私と同じく高台で、「차별없는 사회(差別のない社会)」と書いた大きな横断幕を掲げて立っていた韓国から来た支援者は「そんなこと…」と一言、天を仰いでいた。
道路をわたり、カメラマン越しにみると、「不当判決」、「子どもたちを司法が見捨てた!」の「結果」を悔しそうに口を堅く結んだ男女の弁護士が掲げていた。昨年七月の「勝訴」、「行政の差別を司法が糾す!」とした、一審の判決が覆されたのだ。勝訴の時の二人の笑顔も涙もなかった。
少し離れたところで、裁判の傍聴に来ていた大阪朝高の女子高生がうずくまっていた。二人が涙を手で拭っている。すすり泣く声が聞こえてくるようだ。そんな学友を抱きかかえている。多くの女子高生たちは茫然としていた。
「あまりにもひどい…」、「朝鮮学校に…」、「無償化…」。その場を共にした保護者、同胞、支援者たちの叫びも届いていないようだ。
時間が止まっているようだった。隣で「ヒムネジャ、ヒムネラ」を呪文のように唱えていた女性がいた。「頑張ろう、頑張れ」、自分に言い聞かせているのだろう。
この日、多くの傍聴者が列をなした。「0106」、抽選で当たった傍聴券を女子生徒に譲った。まさかこんな惨い判決が…かえって傍聴した女子高生に酷なことをしてしまったのかもしれない。やるせない思いがこみ上げてきた。見守るほかないのか。裁判前の二つの場面が思い浮かんだ。
傍聴券の配布は二時からだったが、一時間前に行った。裁判所の別館の東門に大阪朝高生と保護者、支援者が集まり、正門まで行進すると聞いていた。
すでに支援者が集まっていた。オモニ会の女性たちに交じって、ソウルから「市民の会」や「モンダンヨンピル」のメンバーも顔をそろえていた。
チマチョゴリ姿の女子高生が並び始めた。男子生徒の姿はない。高三の女子生徒だけが来たという。一審勝訴の日、夕方の報告会でアピールした女子生徒もいた。光州での「4・24の嵐」の公演を控えている劇団タルオルム代表のオモニも来ていた。翌日、光州に向かうと言っていた。
一審勝訴の後の報告会で「やっとやっと私たちの存在が認められたのだと、私たちはこの社会で生きて行っていいんだとそんなふうに言われている気がしました。」(報告会でのアピール=全文、『風景』45号に掲載)と元気に話していた彼女は、控訴審の結果をどのような思いで受け止めたのだろう。
もう一つのシーンは、傍聴券の配布が終わり、裁判所の建物の日陰で抽選を待っていた時だ。
「男子は?」、「午後も授業を…」、「トンムたちはあとで補習?…」
カバンが膨らんでいる。重そうだ。
「何が入っているの?」、「午前中は授業だったので…それから制服です」
第二制服のブラウスとスカートで来て、ここで着替えたという。第二制服には校章も入っていない。男子もだ。校章のバッジをつけるのは、「祖国に行くときぐらい…」と、話していた。
隣で話を聞いていた「市民の会」の孫代表も「本当に重そう…」と。
孫さんは、「重いカバン」を持たなければない現状に胸を痛めたようだ。当日のfbに大きく膨らんだ重そうなカバンを背負う女子高生の写真を三枚載せ、次のように心情を吐露した。
この可愛い子どもたちのカバンがとても大きくて重い。その大きいカバンの中に本と所持品もあるが、着替えの服が入っている。チマチョゴリを着て通うことができない。
ヘイトスピーチと子どもたちをいじめる悪いやつらがいるこの地!
この浅はかで悪いやつらがいるこの地で子どもたちは今日も笑う。
明日を夢見る!
必ず勝つだろうから…。
二一人の女子高生たちは着替えたチマチョゴリを入れた「重い」カバンを抱えて、どんな気持ちで帰路についたのだろう、心が重くなった。
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× ×
判決後、女子高生たちが裁判所の入り口のたかい塀を背に佇んでいるとき、記者会見が行われていた。
後で、オモニ会の女性が「…現実に引き戻された。地獄の底に突き落とされた気持ちだ…先代たちが血と汗と涙で守ってきた朝鮮学校を絶対につぶさせない。いくら国家権力が強大でも、当たり前の権利が認められるまで地面を這いつくばってでも闘う…」と語ったことが伝えられた。
夜の報告集会は「…煮えくり返る怒り…私たちはへこたれない…人間として生きる尊厳を奪うことは…最後まで戦い抜く…」、そんな言葉で始まった。
女子高生のアピールに会場は静まり返る。
「…同じ気持ちだと思います。残念、悲しい、憤り、悔しい…朝鮮人としての自らの存在を否定されたようで悔しい…たくさんの方がごめんねと、今までの闘いは無駄ではない…ごめんねと謝らないで下さい…これからも勝利する日まであきらめない、朝鮮人として堂々と生きることによって日本の社会に訴え続けて行きたい。心から感謝します」
ウリッハキョの水害支援とこの裁判のためにソウルから来た従軍慰安婦にされたハルモニたちの話と「ファイティング」と拳を振り上げる姿に会場から大きな拍手がわいた。
「…生徒の皆さん、オモニたち、絶対挫折しないでください。私たちは数十年日本政府と戦っていますが、絶対にあきらめません。学校は絶対に無くなりません。一緒に叫んでみましょう、ファイティン!」
その後の反省会では、ウリハッキョ関係者、保護者、同胞青年、各地から駆け付けた支援者の姿に悲壮感は消えていた。
「…『不当な支配』ですって、確かに多くの支配と干渉を…組織からも個人からもサラン、たくさんの愛情に支配されています…それが…」
絶対あきらめない、大阪の「おばちゃん」の発言に、みんなが大きくうなずいていた。(金日宇・「記録する会」)
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