金策工業総合大学創立70周年 国際学術討論会に参加して
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もくじ
私語も英語の教授陣
九月の金策工業総合大学創立70周年国際学術討論会(九月二〇~二一日)で発表した朝鮮大学校の先生の報告があると聞いて、第58回科協学術報告会に行った。
朝鮮では近年、ニュースで「科学的に」という言葉を聞かない日がない程に、科学技術の研究とその活用に力を入れている。平壌に林立する高層ビルに続き、一〇月九日付「労働新聞」では「地方建設で新たな転換を起こそう」というタイトルで地方都市の建設を伝えている。土産にもらう菓子やスティックコーヒーの中身はもちろんパッケージも洗練された。スマホが普及し、祝賀行事でパレードの順番を待つ間スマートフォンでゲームをする若者たちの姿が外国メディアに捕らえられたりもした。社会の変化は平壌から送られてくる手紙からも伝わってくる。
そんな中、建国以来、工学部門のトップとし て発展をリードしてきた金策工大の70周年国際学術討論会は、「労働新聞」や「朝鮮中央テレビ」でも報じられた。討論会は、「教育と科学研究、生産の一体化」というテーマのもと
- 地球科学および鉱業分科
- 金属及び材料分科
- 機械及びエネルギー科学分科
- 情報通信及び自動操縦(制御)分科
- 測定及び分析分科
- 情報科学分科
の六つの分科に別れて行われた。中国やロシアをはじめ海外からの参加者もいたが 多くは金策工大の教授陣と研究士たちで、各分科に二十人ほどが参加し、十五~十六人が発表した。朝鮮大学校短期学部の河民一学部長と理工学部の李成基先生は「情報科学分科」と「情報通信及び自動操縦分科」に参加して、発表した。
李先生が発表した「組み立てラインにおける重量機械部分品のための工業用補助ロボットシステム(A Cooperative industrial partner Robot System for Handling Heavy Mechanical Parts in Assembly Lines)」は注目を浴びたようで、「労働新聞」にタイトルが紹介された代表的な論文六本の中にも入っていた。発表後は質問攻めにあい、「新たな発想や知識を吸収したいという強い意欲を実感した」と話していた。
発表はすべて英語で行われ、参加した金策工大の教授陣や研究士たちは私語も英語だったという。高齢の教授たちの中では少したどたどしくても英語を使おうとする努力が伺えたというから、英語が常用化されたのはここ数年のことのようだ。「ホットな分野にも精通していて、知識も豊富だと感じた」という。
李先生が持ち帰った英語で編まれた発表論文集の紙や印刷も他国の国際シンポジウムに比べて遜色のないものだった。カラー版の大学案内は英語と朝鮮語が併記されていた。現在は三大学十五学部で一万五千人、博士院(大学院)で千五百人の学生が学んでいる。教授陣は二千人だ。
一九九〇年代に続く第二次ロボット旋風の中、「自動化・操縦(制御)」分野は特に人気が高く、そこを目指す子どもたちは十歳の頃から放課後は毎日「数学クラブ」に通い、夜十時頃まで勉強して平壌第一高等中学校などの有名校を目指す。その後も有名校で才覚を発揮しなければ入学は難しい。大学に入った後も規律は厳しく、禁煙で、勉強付けの毎日だという。二週間に一度、校内ロボットサッカー大会が行われている。
情報科学分科で「人工知能を利用した新聞記事の自動要約に関する研究」について発表した河民一先生はこの日の報告会で、朝鮮のICT技術の活用について報告した。
平壌では銀行のATMでキャッシュカード、外貨支払いの商店でプリペイドカードが利用されており、その流れは内貨使用の商店にも広がりつつある。スマートフォンは3G回線網で国内用と外国人用の二種類があり、国内では高等中学生(十五歳)くらいから持ち始める。携帯電話やスマートフォンはエジプト資本のオラスコムとの合併会社が販売しているが、金策工大が最近4G世代の移動通信機械を開発し、間もなく発売予定とのことだ。有名だった「ブルグン ピョル」Vol.4は、現在はサーバーとして利用されている。
都市部ではケーブルテレビが普及しているという。また遠隔地向けテレビ電話による診療と医療指導なども実施されている。
光ケーブルが施設されるようになって十年以上が経ち、現在は各道市郡里にまで届いている。大規模末端ではMedia Converterを使って国家網とつなぎ、ルーターでLANを形成している。小規模末端では逓信省のDial Upサーバーを使ってADSLモデムでつなぎ、LANを形成している。これらの回線は、データベースの閲覧や遠隔教育、遠隔会議などに利用されている。さらに今回の訪問では、テレビ放送局がインターネットを通じて様々な映像コンテンツを配信しているのを目撃した。
まずデータベースの閲覧としては、人民大学習堂や中央科学技術情報社、金日成総合大学や金策工大、中央産業美術指導局、国家規格制定研究所などのデータベースを閲覧できる。
遠隔教育では金日成総合大学と金策工業総合大学が独自のシステムを開発して運営している。パソコンやタブレットを利用して受講するが、Wi―Fiは利用できないので、タブレットの場合は、SDカードを利用してオフラインで聴講できるようになっている。金策工大が二〇一〇年九月にスタートさせた。地方で中央の大学の講義を聴けると好評で、二〇一六年十二月までにこのシステムで三百人が卒業した。金策工大のシステムを利用して平壌建築綜合大学、咸興化学工業大学、韓徳銖平壌軽工業大学などでも遠隔教育が行われている。二〇一五年四月からは金日成総合大学でもスタートさせた。入学生は毎年二千人程度で当初は四学科だったが半年後には十六学科に増え、現在は十八学科で運営されている。金日成総合大学のシステムを利用して沙里院農業大や平壌印刷綜合大、元山経済大も遠隔教育を始めた。このシステムの構築には、金策工大で百人ほどのチームが、金日成総合大学では二年制のコンピューター科学大学でシステムを専攻した卒業生たちがたずさわっている。最近は高等中学校や小学校で遠隔試験も実施されている。
さらに遠隔会議システムを活用して、平壌教員大学の研究授業を各地の教員大学で同時に見て、評価するということも実施されている。
映像配信システムは、子供用や大学生用など対象別にさまざまなジャンルの映像を国内のネットワークシステムで配信している。テレビでも閲覧が可能だ。
一般の人が国内用のスマートフォンやパソコンを使って海外のサイトを見ることはできない。平壌科学技術大や平壌情報センターでは閲覧できるが、利用には事前に申請が必要だ。
河学部長は、これまでの平壌訪問や今回の討論会、平壌初等学院の見学を通じて「教育に対する投資は莫大だと感じた」と話していた。
四月に行われた労働党全員会議で金正恩国家委員長が「科学で飛躍して教育で未来を担保しよう!」という戦略的スローガンが提示し、科学技術強国、人材強国を建設するために「科学教育事業に対する国家的投資を決定的に増やして科学教育を重視する全社会的な気風を確立すべきだ」と指摘したことで、教育重視にさらに拍車がかかったようだ。
科協学術報告会への参加は昨年に続いて二度目だった。分科討論は専門的だが、横断セミナーや特別公演は、私のような素人にもわかりやすい内容になっている。科学研究の第一線で活躍する朝鮮学校や留学同の卒業生たちの姿はたくましく、少し難解な脳の体操も心地よい。興味をそそられ、関連書籍を読んで理解を深めたいと思ったりもする。各地のウリハッキョの理数科担当の先生たちも参加して刺激を受けられればいいのに、と思った。(10月13日=金淑子・編集部)
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紹介・関連資料
二〇一八年十月二十日(月)付「労働新聞」が四面で、九月に創立70周年を迎えた金策工業総合大学の特集を組んだ。同大学は、金正恩国家委員長が示した「科学で飛躍して教育で未来を担保しよう!」というスローガンを掲げ、現在も科学分野の先頭を走り続けている。特集からいくつかの記事を抜粋して紹介する。(編集部)
大学に与えられた意義深い呼び名
先端突破戦の「ホン・ギルトン」
チュチェ九九(二〇一〇)年九月、慈江道のある工場を現地指導した偉大な将軍(金正日総書記)は、統合操縦室である人を見つけて親し気に近づいていった。
思いもかけない栄光にを授かった科学者は、金策工業総合大学自動化工学部システム研究室室長だと自己紹介した。
彼のあいさつを受けた偉大な将軍は、室長には六月にテドン江果樹総合農場工場でも会った、そして今日またここで会えたと大変喜んだ。科学者との再会を喜びながら将軍は、君は「ホン・ギルトン」だと言って豪快に笑った。
その瞬間、科学者は胸が熱くなったのか涙を流した。
この日将軍は、彼の解説を注意深く聞いて非常に良い、素晴らしいことをやり遂げた、大きな成果だと、何度も高く評価をした。
今、大学の教育者の中では、偉大な将軍の大きな信頼を心に刻んで、社会主義強国建設の戦区を縦横無尽に飛び回る先端突破戦の「ホン・ギルトン」たちが、どんどん増えて行っている。
一流大学建設へと進む力強い歩み
創造能力を高めてくれる工学教育
大学で創造導入している新たな工学教育は、学生たちが自ら構想して設計し、製作・運営まで行う教育学的過程を経ることで、彼らの創造能力を高める革新的教育方法だ。
現代教育発展の流れに注目した同大学の教職員たちは、大学の特色に合った新たな教育方法をわれわれ式に創造導入することを提案し、数年前から積極的に推進してきた。このような教育方法は、学生たちの着想能力や設計能力、製作技術を高め、彼らが直接操縦運営しながら、一つの創造物を完成できる能力を育てる。さらにこの過程に互いが交流し協力する能力が形成される。
この教育方法を受け入れた結果、学生たちは、現実で提起される科学技術的問題を解決して、人民経済発展や人民生活向上に寄与できる高い創造的能力を身に着けられるようになった。
独特な秀才教育
大学の科学教育力量を強化している重要な要因の一つが独特な秀才教育だ。
金策工業総合大学で秀才教育をするようにという偉大な将軍の遺訓を受けて、大学では、単科大学、学部別に秀才班を運営し、同時にその中でも実力の抜きんでた学生を選抜して大学的な工学秀才班を構成し、そのためのカリキュラムを別に作って実施している。工学秀才班の学生たちのために教授、博士をはじめとする有能な教員、研究士たちが講義や実験実習指導を担当している。また学生科学研究クラブを工学秀才班の学生たちのカリキュラムと合わせて運営するなど、秀才教育を方法論に則って実施することで、彼らを経済強国建設に貢献する有能な科学技術人材に育てている。
工学秀才班の学生たちが世界的なプログラムコンテストに参加して成果を上げているのも、現実に提起されている科学技術的問題を解決するうえで大きな役割を果たしているのも、大学の特性に合った独特な秀才教育を強化したことにその秘訣がある。
十五年前に一つの自動化工学秀才班の運営で第一歩を踏み出した後、今は四つの分野の工学秀才班が構成されて、ここで優秀な人材が数多く育っている。人民経済部門で工学秀才班卒業生たちに対する需要は非常に高い。
教務部の指導教員であるキム・チョルリムさんによると、工学秀才班は今日、大学の誇りになっているという。
われわれ式の遠隔教育
金策工業総合大学は、全民学習システムである遠隔教育の発展で先頭を走り、常に先端レベルで飛躍している。これも大学が誇る成果の一つだ。
金策工業総合大学遠隔教育大学が初めてオープンした時から今まで、学生数は引き続き増え、その運営も驚くほど進歩した。
大学では、遠隔教育をさらに高い水準へと引き上げるための研究事業を活発に繰り広げる過程で、わが国で初の移動通信網による遠隔教育システムをわれわれ式に新たに確立する成果を挙げた。
また遠隔教育で先端と言われる知能教授管理システムを受け入れて、学生たちの基礎知識と認識能力を分析し、これに基づいて様々なレベルの学習内容を提供することで、各地の遠隔教育大学の学生たちの実力向上を手助けしている。これ以外にも学生たちに実際の講義を受けるようなイメージを与える教授効果をさらに高める教育方法導入などをはじめ、遠隔教育を改善するための事業を力強く繰り広げて来た。
大学では現在、空中無線資料通信網による遠隔教授システムを確立し、これを拡大している。このように先端を目指す我々の遠隔教育は、党の全民科学技術人材化構想の実現を早める確固とした展望を見せてくれている。
科学教育のすべての分野で日ごと飛躍する金策工業総合大学は、今、野心あふれる目標の基に一流大学建設へと大きな歩みを力強く踏み出している。52
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