朝大卒業生ならではの視角で一緒にできることがあるはず
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朝鮮大学校理工学部助教
李成基さん
プロフィール
- 1984年8月 生まれ
- 2003年3月 東北朝鮮初中高級学校 卒業
- 2007年3月 朝鮮大学校理工学部電子情報工学科 卒業
- 2014年3月 東北大学大学院工学研究科博士後期課程 単位取得退学
- 2014年4月 朝鮮大学校 教員
東北ハッキョでレゴ教室
目に見える児童の変化
金淑子どこの学校出身ですか?
李成基東北朝鮮初中高級学校です。私の頃はまだ高級部もあり、幼稚班から高級部まで通いました。アボジとオモニも教員でした。
金高級部が無くなって寂しいですね。時々訪ねていくのですか?
李はい。両親も東京に引っ越してきたので、最近はほとんど行けていません。
金そうでした。東北ハッキョでレゴの知育教育をしていたと聞いたことがあります。
李大学院の頃に始めて、朝大に来た後も二年ほどしていました。
金結局何年くらいやったのですか?
李三年ほどです。その後は東北の先生たちができるように少しずつ引き継いで。
金今、知育教育が注目されていますよね。四日市のハッキョでもはじめたと聞いています。
李四日市でも東北の授業を参考にして理工学部出身の先生が始めました。
金神戸朝高を卒業した留学同のトンムが手伝っているそうですね。
李はい。私は今、毎週月曜日に埼玉初級部二年生の一一人を対象に実施しています。
金ほかのハッキョでもやっているのでしょうか?
李最近依頼が増えています。少し前に出張授業で広島と九州の朝高に行った際に、広島の初級部や北九州初級でも行いました。千葉ハッキョでも少し前に特別授業を行いました。
金児童たちの反応はどうですか?
李すごく楽しんでやっています。遊びに近いので。
金レゴで何を育てるのでしょうか?
李レゴで重視しているのは、創造的問題解決能力を育てることです。レゴエデュケーションというレゴの教育部門があって、そこで提唱している教育理念を参考にしています。レゴスクールというのが全国各地にあってそこに通っている子どもたちもそのプログラムで学んでいます。出された課題を、レゴブロックを使って解決するというものです。レゴスクールでは個人で課題に取り組むことが多いのですが、私が対象とするのはハッキョなので、レゴを通じて集団力、協調性を育てるということを意識しています。チーム別で問題解決にあたります。
金実施してほしいという要求が多いですか?
李多いですね。特に最近は保護者の方たちの要求が多いようです。
金日本の学校でも取り入れているのでしょうか?
李カリキュラムとして取り入れている学校はないと思います。みなスクールに習い事として通っています。ウリハッキョでも授業として取り入れたのは、東北の初級部が初めてで、ほかは単発です。でも続けてこそより効果があるので、今回埼玉では一年間、毎週一度、時間表に入れて実施することになりました。
金東北で三年間続けてみてどうでしたか?
李東北は児童数が少なくて、一クラス二、三人という状況でした。二人では児童たちの社会を築くことがむずかしいです。そこで低学年六人で取り組むことにしました。学年をばらばらにしてチームを作って課題に挑戦していくうちに、自分の意見をしっかり主張するようになったり相手の意見を尊重できたりと、少しずつ変わっていく様子がうかがえました。レゴは答えが無く作業が単純なので、学年にとらわれずに発想で勝負することができます。はじめは発表を恥ずかしがったりしても、個性を認めてほめていくと少しずつ自信が育って、自分から発信できるようになります。そうするうちに互いを認め合う関係が築かれていきます。
金具体的な授業の内容は?
李課題を出します。例えばブロックを一〇個だけ使って動物を作ろうと。それができたら、次は二人で二〇個使って作ろうという課題を出します。すると二人でいろいろ意見を交換するようになります。作った後は、自分が力を入れた部分や難しかった部分などを必ず発表して、ほかのトンムの質問に答えたり、意見を聞いたりします。「○○がかっこいい」とか「これは何?」とか。
金そうして回数を重ねていくと、しっかりした主張ができるようになる。
李そうですね。少しずつ変わっていきます。上級生が下級生の面倒をよくみるようになったり、他人と力を合わせることの楽しさを感じたり、変化が目に見えてきます。
金それは初級部低学年が対象なのですか?
李レゴスクールの対象は幼稚園から高学年まで幅広いです。高学年になるとロボット教材でプログラミングもするようになります。ところが高学年は授業も増えクラブ活動もあってなかなか時間が取れないので、東北ではとりあえず低学年から取り入れることになりました。
ロボット競技会出場など
科学好き生徒の活躍の場を
金高学年になっても続けられればいいですね。
李そうです。そんな思いもあって神奈川の中級部、高級部で宇宙エレベーターロボット競技会にチャレンジしたりもしたのですが。そういうことに接するチャンスがないので。
金今年は東京中高でチャレンジしたと聞きました。
李はい、中学三年生たちが出場して、予選を突破しました。神奈川はこれまで宇宙エレベーターロボット競技会に二年連続チャレンジした後WROのロボットコンテストに出て、その翌年再度エレベーターロボット競技会に出たのですが、今年は出場しませんでした。レゴの授業とエレベーターロボット競技会は、目標が違いますが、科学で力を発揮したい生徒たちが活躍できる場になります。中高級部で運動クラブや芸術クラブに入っている生徒は多いのですが、科学を楽しむ場も必要だねと神奈川ハッキョの校長先生と話していて、競技会に出ることにしました。
金朝大理工学部を卒業した先生たちが多いと思うのですが、そういう先生の中で科学クラブを作ろうというような動きはないのでしょうか?
李ロボットは工学ですが、朝大理工学部工学科の卒業生のほとんどは、ハッキョではなく企業に就職します。理学科卒業の先生も関心はあると思うのですが、むずかしい部分も多いと思います。毎年朝鮮大学校で初級部の児童を対象に「トトリカ教室」をやっていますが、中高級部にはそのようなイベントがありません。そこで少しハイレベルな実験などを体験する中高級生対象の「トトリカ教室」を神奈川の中高級生を対象にやったことがあります。三年前のことです。夏休みに行われる理数科の先生たちの講習と同じ日程で、朝鮮大学生が中高生を指導しました。ところが中高生はクラブ活動が忙しいので日程を合わせるのが難しくて、その後は実現できていません。生徒たちの要求もあるし、熱意のある先生たちもいるのですが、現実的な解決策が必要です。
金ITやロボットへの関心は高いですよね。
李高いです。今回宇宙エレベーターロボット競技会に出た東京中高の中級部三年生は、「クラブより面白いし、ずっとこれをしたいのに下校時間には帰らなくてはいけないし。中央体育大会が終わってからやろうということになっていたけど、もっと早く始めたかった」と言っていました。これまで出場した神奈川の生徒たちも放課後夜遅くまで、休日も一日中、夢中になって準備していました。
金競技会で失敗した時も、必ずリベンジすると言っていました。
李あの時出場した生徒が今、朝大理工学部にいます。今回東京朝高に行って生徒たちを指導しました。大学生が手伝ってくれるので生徒たちも喜んでいました。時代の流れは科学技術やITの方にどんどん向っていると思います。アンケートによると、工学を専攻したい高級部生は大勢います。幼いころからコンピューターやスマホが身近にあってゲームやロボットになじんできた世代なので。ところがそういう生徒たちの力を発揮する場がないというのは、もったいないです。宇宙エレベータ―ロボット競技会なんかを、全国の高級部生徒を対象に朝鮮大学校で開催できるといいのですが。興味のある生徒がいるので、それを生かせる場を、朝大も協力しながら作っていかなくてはいけないと思っています。
金四日市は留学同が協力しているようですね。地方ではそういうケースがあってもいいのではないかと思うのですが。
李留学同も活発に活動している地域とそうでない地域があって、私が東北大の大学院にいた頃、東北には留学同が無くて朝青として一緒に活動していました。
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