誰もが活躍できる同胞社会を目指して
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インタビューを終えて
金淑子
六月初めに神楽坂のコーヒーショップで話を聞いた。忙しい合間にどうにか時間をとってもらってインタビューした。
性差別撤廃部会があるという話は聞いていた。大変興味深かったが、三十代以下の女性たちが多いと聞いて年代がかなり上の私が行っていいものか、躊躇していた。そんなとき「4.23アクション」で、劇団トルのキム・キガンさんが日本軍慰安婦制度の犠牲にされた女性をテーマに演劇をすると聞いて、訪ねていった。
会場には東京や神奈川の朝鮮中高級学校の美術部生徒たちの絵が展示されていた。本誌でも何度も紹介しているが、近年の美術部作品は周作ぞろいだ。展示された作品も鋭い感性で問題をとらえ、個性豊かにアピールしていた。少なくとも生徒たちはこの問題を女性だけの問題とは見ていないようだ。
「4.23アクション」が、解放後沖縄で暮らしていた日本軍の従軍慰安婦制度の被害者・ぺ・ポンギさんの証言が一九七七年に初めて「朝鮮新報」に紹介された日を記念している行事だと聞いてショックだった。それから四〇年以上の歳月が流れている。その間も「朝鮮新報」では、韓国の挺身隊問題対策協議会の結成や運動、被害者の証言などを伝えてきた。九〇年代に日本語版で八年以上韓国問題を担当していた私も、集会取材や被害者インタビューなどを通じていろいろ勉強したが、それを在日同胞女性の人権に結び付けて集まるという発想はできなかった。二〇〇〇年代初めに人権協会の勉強会に何度か参加したことはあった。それも当時としては画期的に思えた。しかし組織的に多様な活動をするようになったのは部会発足後のことだ。これまで取り組みがおろそかだった分、若い女性たちへのしわ寄せは大きい。
在日朝鮮人社会は今も男性の役割と女性の役割がはっきりと分かれている。青年同盟を卒業すればほとんどが、男性は青年商工会、女性は女性同盟に分かれる。青商会はまだしも、結婚して子どもを持つ女性たちの団体として発展してきた女性同盟に、未婚や子どものいない女性はかかわりにくい。おまけに三十代以上のすべての女性が一つの団体というのにも無理がある。女性たちの生き方は多様化しているのだ。それは、インタビューの中でも出た組織の活動家として女性のキャリアをどう認めるのかという問題とも関連している。
ハッキョでも保護者会ではなく、「アボジ会」と「オモニ会」に分かれている。イベントの時は食事の準備を「オモニ会」に丸投げするケースも少なくない。オモニ会にアボジが代わって参加するのは難しい。逆のケースも同様だ。家族の在り方も多様化している。不都合も多いはずだ。
さらに深刻なのは、性別によって役割を固定することは、「女性はこうあるべき」「男性はこうあるべき」という認識の固定化を強要し、セクシャルハラスメントを生むということだ。
そんな中で勉強会やポグムチャリの存在は非常に意義が大きいと思う。日々の生活の中の疑問や傷ついたことを共有できる仲間がいることは何よりも心強いだろうし、学ぶことが慰めとなり力になると考えるからだ。さらにそうして学んだ人たちが各地のハッキョで講義をし、セクシャルマジョリティーだけでなく、マイノリティーの人たちも居心地の良いスペースを作るために試行錯誤をかさねている。この部会の積み重ねが少しずつ実を結んでいるということだ。
この活動が、女性たちの声を大きくし、性別を問わない男女共生のための活動として各地に広がっていくことを願い、そのために今からでも一緒に力を合わせていければと思う。50
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