誰もが活躍できる同胞社会を目指して
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東京、京都…、広がるジェンダー教育
金ジェンダーの勉強会や「ポグムチャリ」に来る人たちの中には既婚者もいるんですか?
李います。五十代で参加している方もいて、結婚して子どもがいる方もいます。でも子どもが幼いうちはどうしても夜出てくるのは難しいようです。メンバーだったけど、子どもが生まれて出てこられないケースもあります。
金きっと「ポグムチャリ」などでは様々な問題が提起されていると思うのですが、それをどうやって解決していくのですか?
李そうなんですよね。何年か前に、アンケートを実施して、いろんな意見を聞いたんですけど、問題は多様で、それを見る限り、世の中は決してよくなっていないなと思いました。例えば「結婚していなくて、子どもがいない場合、総連のイベントに参加し辛くないですか?」という質問に、ほとんどの人が「参加し辛い」と答えています。家庭を持っていないと総連の集まりには参加し辛いとほとんどの人が感じているというのは、問題だと思います。そういう現状を知ってもらいたくて、アンケート結果を四百部ほど刷って総連の各部署やハッキョにも配布しました。今のところそれくらいですかね。具体的に何をすればいいのか。
金難しいですよね。でも聞いた以上は変えていかないとね。
李そうなんです。聞いた以上はスルー出来ないんですよね。一番やりたいのは、やはり教育なんです。新しい世代の感覚を変えていかないと、再生産されていくので。東京朝高でジェンダー教育を実施したこともそうだし、朝大で朴金優綺トンムがジェンダーの授業をやっていることも大切だと思っています。そういう授業を受けて、卒業後、教員や総連の活動家になった人たちによって、少しずつ芽は出ているのかなという感じはしています。
京都の初級学校では、セクシャルマイノリティーの教育が始まりました。京都初級学校では保健室を運営しているのですが、そこに留学同を卒業した看護師がいます。ある先生が、卒業生の中にセクシャルマイノリティーの生徒がいたのに気づけなかったそうです。卒業して会ったときに初めて知って、授業で「男らしさや女らしさを強要しなかったかな」と怖くなったという話を保健室で聞いて、そういう教育をしようということになったのが始まりだそうです。名古屋でもトランスジェンダーの児童が自分の着たい制服を着て、ハッキョに通い始めたという話を聞いています。児童の保護者の方が『イオ』に手記を寄稿したりして、少しずつではあるけれど、変わらざるを得ない状況が出ているのかなと思います。そういう時にしっかりと受け止めて周りを説得できる人がいればいいですよね。そういうお手伝いができればいいなと思っています。
金残念ながら私たちは、カミングアウトした人たちから学ぶしかないんですよね。本人は開拓者の役割も担わされて本当に大変だと思うのですが。
李月刊『イオ』に、東京朝高を卒業した四〇代の男性だったと思うのですが、「自分はゲイで、ハッキョに通う時は言えなかったけど、今はパートナーもいてすごく幸せだ」という記事が出ていて、「やはりこういう人がいるんだ」とびっくりしました。東京朝高卒業となると、狭い同胞社会では「俺の同級生だ」とか「だれだれの親戚だ」とかなるじゃないですか。東京朝高での「デートDV」の講義の時に、その人の例を挙げて「あなたたちの中にも悩んでいる人がいるかもしれない」と、想像力を持つこと、「男らしさ、女らしさ」を強要しないことが大切だと話したのですが、生徒たちは自分たちの身近にもいるんだということに気付いたようです。カミングアウトした人の勇気を無駄にしないというのもおこがましいのですが、学ぶことは大切だと思います。
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