祖父母、父母の思い、次世代に伝え、在日同胞社会に根を張って生きる
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ハッキョ再編成見越し
頼もしい次世代にバトンタッチ
金今後はどのような活動を?
李七〇周年事業の成果はここで一旦置いて、これからは、今問題になっている愛知のハッキョ再編成の中で七〇周年以降を考えていく必要があると思っています。再編成後はより広範な地域の子どもたちが東春に通うことになるようです。そうして東春ハッキョは新しい拠点としてより重要な地位を占めることになります。これまでは従来の東春ハッキョの範囲で考えてきましたが、これからは再編成を見越して考えなくてはいけません。共倒れになるのか、未来に残すのか、葛藤は大きかったと思うのですが、残された選択肢はもうこれしかないのです。今、各地域で再編成の説明がされている段階です。東春地域の説明会は終わりました。
金じゃあ、東春地域の同胞は基本的には知っているということですね。
李話は広がっていると思います。これまでの東春ハッキョの学区だけではない、この先東春のハッキョに通うことになるであろう児童や保護者たちと一緒にやっていくやり方を考えなくてはなりません。手始めとしてアボジ会が今年、保護者と子どもの交流会を企画しています。そういう動きをしながら七〇周年以降は、次のステージに引き継いでいくために頭をひねっていかなくてはなりません。
金もう少し広い地域でハッキョを支えていくということですね。
李そうです。また私自身去年はあまりにも人前に出すぎてしまいましたので今年は一歩引こうと思います。いつも同じ人が先頭を走って仕切っていては弊害が生じます。次の若い芽を育てなくてはなりません。七〇周年の行事で、中心になったのは私たちの世代でしたが、一世代下の青商会の保護者世代が積極的に動きました。誰かに言われて動くのではなくて自分たちが仕事を探して動いているんですね。そこに希望を見ました。確実に受け継がれています。徐々に次の世代に任せて、バトンを渡すべきだと思いました。このタイミングを外すと人材が育たず組織が痛手を負うことになります。
金じゃあ、次のステージに。
李そうです。まだこれだというはっきりとした形が見えているわけではないんですが、これまで朝大を卒業以来二五年間、東春地域で仕事の傍らハッキョや同胞のためにと活動してきました。一方で子どもたちに空手を教えて一九年になります。今後はハッキョや同胞社会を支えながらも、空手を通じて実際に子どもたちを育てるほうにより重きを置いていこうと考えています。ウリハッセンや日本の子どもたちに、週四日、道場で空手を指導していますが、稽古の過程でどんな困難にも打ち勝てる精神的に強い子を育てたいと思っています。ただ強くても卒業したら同胞社会から離れていくようではどうしようもないので、同胞社会の中での強い存在としてどう育てていけばいいのかを模索していきたいと思っています。
金なぜそこまで同胞社会にこだわるのですか?
李在日同胞はともすれば自分の立ち位置を見失いがちになります。朝鮮人だけど、自分の国で生まれたわけでも育ったわけでもない。私にとって春日井は故郷だけど、祖国は日本ではない。じゃあ、自分の心のよりどころはどこかと聞かれれば、同胞社会なんですよ。同胞社会が無くなれば根無し草になるしかありません。そうなってはいけない。自分という存在をしっかりとしたものにするためには根を張る必要があります。根を張る場所が同胞社会であり、ウリハッキョなのです。これを守らずしてこれまでの四七年間、そしてこの先の人生に意味があるのだろうかと。自分の人生をまっとうに悔いなく終えるにはこの道を一ミリたりとも外れるべきではないと考えています。
金そうして子どもたちにもコミュニティを残してあげるということですか?
李そうです。子どもは、私がアボジの背中を見て育ったように、私の背中を見ているはずです。私がアボジから言葉で習ったのではなくて背中を見て育ったように、一緒に仕事しながらその姿勢からたくさん学んだように。原点はハラボジ、ハルモニ、アボジ、オモニです。そのうえで、同胞社会で鍛えられました。人間は受けた恩は返さなくてはなりません。目に見えるプレゼントと違うところは、くれた人に返すのではなく、次の世代に返すことだと思います。
同胞社会で育ちながら、同時に空手に大きな影響を受けました。高校、大学と空手をやって、社会人になった後も毎週道場に通って稽古してきました。自分で道場を持つようになって、六年前からは会社事務所の二階に道場を設けるようにもなりました。今の自分は同胞社会と空手が育ててくれました。それを次の世代に伝えていきたいです。
*文中の写真はすべて李栄祚さんのフェイスブックからの転載―整理者
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