教育援助費と奨学金が送られてきた日(再現1957.4.19)
スポンサードリンク
スポンサードリンク
談近来稀に見る国際的美談高津正道・日本社会党衆議院議員
(略)
私は、一昨年の一〇月、古屋貞雄代議士と一緒に朝鮮を訪問し金日成首相をはじめ南日外務相とも面談する機会をえた。その席上、金日成首相は「日本にいる朝鮮人子弟に教育援助費を送ろうとするが、その方法を講じてほしい。また、在日学生たちが帰国し平壌で勉強をすることを希望していると、その願いを実現させたいので、協力を願う」と、依頼された。そのような経緯もあり、今回それが実現したということは、私としては特別な喜びを感じている。
古屋氏は日本衆議院予算委員会で、種積七郎氏は外務委員会で、それぞれ政府の見解を正しながら、そこで言質をとらえ、また数週間前には私も自ら前外務次官山本熊一氏と一緒に外務省を訪れ、井上外務政務次官と中川アジア局長とこの問題について意見交換をした。そのとき中川局長は「外貨が合法的に送金されて来るのを阻む法規はない」との見解だった。したがって、日本政府としては、本件に関して干渉する何ら根拠もなく、阻むことはできない。
いずれにせよこのたびの金日成首相の措置は、近来稀に見る国際的な美談である。
私は朝鮮で、金日成大学とその他の学校などを視察したが、政策とその感覚が新鮮で驚いた。今、この事実[教育援助費と奨学金の送付]に接し、私は近隣の若い指導者に対してもう一度尊敬の念を禁じえなかった。
このたびは在日朝鮮人学生たちの中でも新たに大学に進学した若者たちが相当数に達すると思われるが、彼らの喜びも非常に大きいと信じながら、私も皆さんに心からの祝賀を送る。
報道民族教育発展の歴史的転換点教育会・教職同合同臨時大会(1957・5・8~9)
祖国から送られてきた教育援助費と奨学金と関連し、これに報い、われわれの教育事業をより高い段階に発展させるための諸般の対策を講じるために召集された「教育会第六次、教同第二四次臨時合同中央委員会」は去る八、九の両日[一九五七年五月]、全国の中央委員五〇名と傍聴人が参加して、東京の朝鮮会館で開催された。同大会では、このたびの送金の意義について真摯な討論が行われ、祖国の恩恵を民団、中立層の学生を含むすべての在日学生に巡らす具体的な措置などを決定した。
大会初日、李珍総連教育部長の共和国教育局副局長からの手紙の朗読後、尹徳昆中央教育会会長から祖国の貴重な配慮への感謝と決意を表明する挨拶があった。
来賓として日朝協会理事長の畑中正春氏が「このたびの共和国の措置は日本人にも多くの感動を与え、思想を超越しすべての朝鮮人に分けるということは、驚嘆すべき発展の方向だ」と強調、韓徳銖総連中央議長のこのたびの措置が歴史的転換点を強調する挨拶があった。
討論では、在日同胞が一〇年間、あらゆる困難とあい路を克服するために心を一つにした努力の結果、実現した恩恵であり、これはまた、われわれ民族教育の正当性を証明するものであり、海外公民に対する共和国の国家的施策であり、このたびの祖国の配慮は民族教育を新たな飛躍の段階に引き上げる推進力になるという、意義を確認しながら、次のような当面の実践課題を採択した。
▽このたびの措置によって、われわれの民族教育をはじめすべてのことが解決されたのではない。よりいっそうの努力と奮闘が要求される。
▽いまだ克服されない多くの弱点を是正し、民族教育を国家の施策として実施するうえで、すべての教育者は国家と人民の前に公民としての責任と義務を負ったという観点に立つ。
▽この奨学金と教育費を土台に、全群衆的熱意で、二倍三倍の物質的土台に拡大する方向で努力する。
▽祖国の同胞の血と汗で成した財宝であることを肝に銘じ、予算決算事業などを計画的に正確に執行し、徹底した節約運動を起こす。
▽学校事業運営の土台になる教育会を早急に強化し、正常運営を期する。
このような基本的課題に基づき、直接予算の割り当てについては、①祖国の恩恵を民団などの学校子弟を含むすべての同胞学生に均等に分ける。②初等学校の学生の授業料を免除し、中高級学校は減額する。また、初級学校の教科書を無料で配布し、中高級の教科書は価格を下げる。③この送金は学校運営の経常費にのみに限り運営し、一切の学校施設の拡大などの費用は、従来通り大衆的熱意で充当するという観点に立脚し教育指導事業、不足な教員(初・中・高)要請、現職教員の資質向上のための教養費、日本の大学に在学中の留学生に対する奨学金、朝鮮大学に対する援助、教育人件費などに充当するが、地方の実情を考慮しながら四月にさかのぼり(基準は四月現在の実績にする)、六月から実施することを決定した。 大会では満場一致で民団など、中立系統の学校にも同一基準と比率で教育費を分けることを決定した。
すなわち、基本的権利と教育を守る観点から過去の若干の誤解と政見の差を越え、すべての同胞学生に祖国の施策として配慮された恩恵を等しく享受しようとの観点から同一の基準で、民団など一千五〇〇名の学生にも七〇〇余万円に達する金額を割り当てた。そして今後、わが教育会と教同の方針にも明示されたように、民団、中立学校の教員、学生との交流をいっそう強化することが決議された。
また、会議では最後に金日成首相、在日同胞、日本の各界人士に送る感謝の手紙を採択した。(「朝鮮民報」5・14)
スポンサードリンク