「第四次産業革命」と朝鮮学校
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先日、とうとうパソコンを買い換えた。Windows98から五台目の購入だ。
九〇年代末、ISDN回線で電話代を気にしながら当日の韓国の新聞を見たとき「これは革命だ」と思った。あれから二〇年足らず、「動いては固まり、再起動しては固まる」を繰り返したMillennium、ソウル留学中の相棒だった東芝のXPのノートパソコン(韓国サイトとの相性が恐ろしく悪かった)、『風景』の原稿や勉強会仲間との共著本三冊を生み出したWindows7、そして今回購入したWindows10。この間ネット環境は安定し、高速化した。ネット上の情報は驚くほど膨大化して、整理され、使い勝手のいいものになった。
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PHSを持ち始めたのはパソコンの少し前だろうか? その後携帯電話になり、スマホになり、今は二代目のiPhone。当日の新聞どころか「聯合ニュース」の速報がその都度アップされ、キャンドルデモのライブが流れ、同胞や海の向こうの会ったことのない友人たちとファイスブックで情報を交換し、SNSでメールや無料通話もできる。韓国の電子図書をダウンロードしてアンダーラインを引きながら勉強したこともあった。初めての場所を訪ねるときはGoogleマップが欠かせない。最近は、サイトを開いて打ち込む必要もない、話しかけるだけで応えてくれる。
広瀬すずが「私たちは今までの大人の後輩なんかじゃない。私たちはスマホと大人になっていく、たぶん初めての人類だ」と、「Super Student宣言」するソフトバンクのCMを見ると、没個性の制服(引き留めておきたい大人の願望?)と宣言の内容のアンバランスや「今更感」はあるが、そういう世代が育ちつつあるのは事実だ。それどころか「スクラッチ」や「ビスケット」など数多くの子ども用プログラミング教材が無料で公開され、ゲーム感覚で学ぶ園児や児童が少なくない。彼らにとってコンピュータは、もはや鉛筆や紙同様、道具の一つに過ぎないのだろう。
世界経済フォーラム(ダボス会議)の創設者であるクラウス・シュワブは、今は初期段階にある人工知能(AI)、ロボット技術、自動運転車、3Dプリンタ、ナノテクノロジー、バイオテクノロジーなどの先端的技術が「現実世界やデジタルの世界、生物学的世界のあちこちで融合し、互いを強化かつ増強しながら、すでに開発は変曲点に達している」、「変化はきわめて大きい、人類史上、最も前途有望で、最も危機をはらんだ時代」として、蒸気機関の発明と鉄道建設による第一次(一七六〇年代~一八四〇年代)、電気と流れ作業による第二次(一九世紀後半~二〇世紀初頭)、デジタル革命による第三次(一九六〇年代~)に次ぐ、「第四次産業革命」(二〇〇〇年代以降)の時代だと指摘している。
第四次産業革命の特徴は、「これまでとは比較にならないほど偏在化しモバイル化したインターネット、小型化し強力になったセンサーの低価格化、AI、機械学習」であり、「これらのテクノロジーが融合し、物理的、デジタル、生物学的各領域で相互作用が生じたこと」がこれまでの産業革命とは根本的に異なり、「これまでの産業革命をはるかに凌駕する速度と範囲で普及している」と述べている。
彼はこの革命が、人間をロボット化してこれまで私たちが重視してきた労働やコミュニティ、アイデンティティというものを脅かす可能性と、人間を共通の運命感に基づいた新たな集団的、道徳的意識へ到達させる可能性を秘めているとし、後者に導くことが私たち全員の責務だとしている。
『人口知能と経済の未来―二〇三〇年雇用大崩壊―』の著者・井上智洋は、「機械の発展の果てに多くの人間が仕事を失います。役立つことが人間の価値のすべてであるならば、ほとんどの人間はいずれ存在価値を失います。したがって、役に立つと否とにかかわらず人間には価値があるとみなすような価値観の転換が必要となってきます」と述べ、「教育は人的資本に対する投資」という資本主義的考え方を改めるべきだと指摘している。
資本主義の発展とともにはぐくまれた「有用性を極度に重視する近代的な価値観」から、寛容や尊敬、配慮や思いやりに基づいた新たな価値観へとシフトするためにも、アイデンティティを大切にし、コミュニティの重要性を学ぶ朝鮮学校の教育こそは、今の時代に求められる教育ではないだろうか。金淑子・編集部41
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