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交流の場としての朝鮮学校・猪飼野セッパラム文庫
プロフィール
藤井幸之助・同志社大学嘱託講師・猪飼野セッパラム文庫主宰
1961年 大阪府高槻市生まれ、豊中市で育つ
1986年 大阪外国語大学朝鮮語学科卒業
2015年 大阪市天王寺区に「猪飼野セッパラム文庫」を開館
毎月、コリアン・マイノリティ研究会月例研究会と「映像で見る朝鮮韓国在日」上映会を行っている。
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多様なありよう、知ってほしい
金淑子ここに、こうのすけさんが編集された『同志社女子大学2016年度春学期「社会と外国語教育A」報告書』があります。学生たちが朝鮮学校やインターナショナルスクールや日本語学校を訪ねてレポートを書いていますが、これは毎年なさっているんですか?
藤井幸之助(以下、こうのすけ)・今年で四年目になります。「社会と外国語教育A」という半期の授業です。副専攻で日本語教員養成の課程をとっている学生が多く、将来日本語学校の先生になりたいと思っている学生たちが二十数人、受講しています。日本において民族の異なる子どもたちがどうやって民族語・継承語を身に着けようとしているかということを知ってほしいなと思い、やっています。
対象は学齢の子どもたちが民族語・継承語習得のために通う学校や、学ぶ機会のなかった大人の人たちのための中学校夜間学級(夜間中学)や識字教室、ニューカマーの人たちが学ぶ日本語教室などです。
最初に希望を聞くと、学生たちは日本語学校や英語系のインターナショナルスクールに行きたがるんですよ。でも、僕としてはアジア系の学校や滋賀にいくつかあるブラジル学校に行ってほしい。学生たちが存在さえ知らなかったところに行ってみるというのはいいことだと思います。
各学校が抱える制度上の問題も知ってほしいし、子どもたちの言語習得も大きな課題なので、あらかじめいろいろな質問事項を準備して行ってもらっています。どこも財政的な問題や生徒集め、運営のむずかしさは抱えていますが、訪ねた学校の校長や教頭、教務主任もいきなりは進んでそういう話をしないようです。学生たちも教員の待遇とかも考えたことないので、頭がそっちに行かない。
金そういう経験をしてカルチャーショックはあるのでしょうか?
こうのすけ間違いなくありますね。
講義では、前半はVTRを通して、教育の多様なありようを知ってもらうようにしています。学生たちのほとんどは普通に私立か公立の高校を卒業して、大学にきて、特に不自由なく勉強しています。学校訪問で、自分たちが受けてきた教育とは少し事情が違うようだということはしっかり見てきます。また、学ぶ側の真剣さと教える側の熱心さを目撃して、「教育の原点を見た」と書いてくるものもいます。日本学校では生徒と教員の間に距離ができていますからね。
学校を訪ねるときは、あらかじめアポイントメントを取って、訪ねていって取材して、レポートにまとめて、最後の講義ではプレゼンテーションをしてもらっています。すべて自分たちでやってもらい、僕は状況報告を受けるだけ、何かトラブルがあったら相談に乗るようにしています。講義最終日のプレゼンでは取材調査のエピソードやうれしかったことや苦労したことについて話すようお願いしています。交渉力を高めるスキルの勉強を兼ねていることも伝えます。
途中で教育実習に行く学生もいるので、学校を訪ねた時に先生になった気持ちで接してくれたりするのはいいかなと。教育をどうとらえるのか、何を伝えるのかという視点で臨んでくれるのはいいことだと思います。
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