ロボットと人間の違いって?
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教育の情報化シリーズの取材を始めて、久しぶりに講義を受けて勉強したくなり、gaccoのサイトを開いてみた。gaccoは、大学教授陣による本格的な講義を、学生に限らず幅広い人がパソコンやスマートフォン、タブレットによりオンラインで無料受講できるサイトのことで、二〇〇四年二月に開設された。開設当初にいち早く会員登録したものの、そのままになっていた。目についたタイトルが「人とロボットが共生する未来社会」、講師は大阪大学の石黒浩教授だ。「マツコロイド」や美人過ぎる女性ロボット「ジェミノイド―F」などを作ったことで知られる。
この講義は四週間(四テーマ)を目安にしたもので、一つのテーマは一〇講義。一講義は一〇分ほどで、通勤電車の中で聞くことも多かった。講義内容は映像の横に文字でも提供される。それをダウンロードして教科書として活用した。講義を繰り返し聞きながら、時には文字を追って自分のペースで勉強できるというのは、ありがたかった。テーマごとにレポートを提出し、他の受講者のレポートを採点した後、自分のレポートを自己採点する。この過程を通じて学習が深まる。提出した自分のレポートに対する他の受講者の採点の総合点が七〇点(百点満点)以上だと修了書がもらえる。第一週で、自己採点することを知らないまま期日を逃して、〇点(二〇点満点)となり、修了は無理かと思ったが、講義が面白くてやめられなかった。
講義で最初に驚いたのは、ロボットの普及が目の前に迫っているということだった。例えばパソコンは、二〇万円ほどの価格が実現したとき、誰もが購入して、様々なソフトウェアを開発できるようになったことで、メールやホームページなどのソフトウェアが便利に使えるようになり、人々の生活に溶け込んでいった。一方二〇〇四年に発表された感情認識パーソナルロボットpepperは一九万八千円で、現時点においてほぼ最先端の技術をもっている。低価格が実現したことで、誰もがロボットを購入し、ソフトウェアを開発できるようになった。生活に便利な革新的なソフトウェアが開発されれば、ロボットもまたパソコンのように普及する可能性が高いということだ。
さらに人間のような外見と動きで、人間の意図を理解する、より人間らしい高度な知能を持つロボットの誕生もそれほど遠くないということだ。視覚研究や聴覚研究というように分野別に行われて来たロボット研究が、二〇〇〇年以降、最初から組み立てられた人間型ロボットで学習するという、より人間に近い機能を実現したことで、時間を大幅に短縮できるようになった。人間と同じような外見を備え動きを実現するようになれば、人間型ロボットを使って、三人、四人が同時に多様に関わる場面で、どのようにロボットを制御すればいいかという研究を積み重ねることができる。自らの動作、意図、欲求のネットワークに照らし合わせ、相手の人間の意図や欲求を理解できるロボットができるということだ。
そんな人間型ロボットが実現した場合、人間との違いは何なのか? これについて論議しなさいというのが最終レポートの課題だった。
先日夜放送されたNHKスペシャル「天使か悪魔か 羽生義治 人工知能を探る」で、将棋界最高の頭脳と言われる羽生善治も、日々、「人間にしかできないことは何か」を考え続けていると言っていた。取材を終えて「これは人間しかできない」とか、「これはAI(人工知能)にはできない」ということはないということを前提に考えているほうが、いいのではないかと語っている。番組では「人工知能が人を超える予感」についても語っていた。
レポートの課題が何日も頭を巡った。それなりに考えをまとめて提出し、採点が終わって修了書発行を目前にした今も、正解はわからない。
私は講義を通じてこの課題に出会ったが、今育ちつつある子どもたちは、人工知能と共に生活し、常にこの課題を考えながら生きていくことになるのだろう。私たちは、子どもたちが考えるための材料やきっかけをできるだけたくさん提供してあげなくてはいけない。IT機器を駆使できる技術だけではなく、それを使って自分たちにしかできないことは何なのかを探ること、それがICT教育なのだと、改めて思った。
次回は「インタラクティブ・ティーチング」の講座を勉強してみようと思う。
(金淑子・「記録する会」)37
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