特集)創立60周年を迎える朝鮮大学校
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新学舎祝賀会での記念講演(1959.7.7)
韓徳銖・初代学長
親愛なる同胞のみなさん!
公私とも多忙にもかかわらず、猛暑をもはねのけ、遠方からこのようにたくさんの方々が参列し、祝賀してくれたことに対して私は朝鮮総連中央常任委員会と大学のすべての教職員を代表して、熱烈に歓迎し敬意を表します。
昔から私たち朝鮮人と縁が深い武蔵野、風景が良いこの地に朝鮮大学の新学舎を堂々と建て、在日朝鮮青少年たちに民主主義的民族的大学教育を心置きなくできるようになったことを皆さんとともに喜ぶ次第です。
わが大学が一九五六年に教室一つ、実験室一つ満足に持てないまま東京中高級学校の仮校舎で、開校したときは二年制の短期大学でした。この短期二年制の大学では祖国が期待し、わが民族が嘱望する有能な人材を養成するには、不十分でした。私たちは困難な条件下においても金日成元帥の暖かな愛と共和国政府の格別な配慮に鼓舞され、一九五八年に四年制大学に発展させました。
当初、二年制の大学を開校するときには、学生が数十名に過ぎませんでした。今では二百余名、教職員だけでも六十余名に達しました。私たちは新学舎を建設するために三年余りの長い月日をかけ努力を重ね、敷地の候補地だけでも数百か所が上がりました。そのたびに日本政府の非友誼的措置によって私たちの火花のような願いは実現することができませんでした。
金日成元帥を首班とする朝鮮労働党と共和国政府が海外で暮らす私たちの子どもたちのために二億五一万円に達する莫大な教育援助費を直接送ってくれた配慮、共和国の平和的内外政策に徹底的に依拠した総連の指導の下、大学当局の涙ぐましい努力と同胞たちの心のこもった支持、そして平和と民主主義を愛する善良な多くの日本人民との友誼に満ちた支援によって成し遂げられました。
私たちに朝鮮大学の新学舎を準備するために格別な配慮を施してくれた朝鮮労働党と共和国政府に最大の敬意と熱烈な祝賀を捧げます。
物心両面で様々な援助を惜しまなかった同胞たちと日本の人士たちに心からの祝賀と感謝を送ります。
親愛なる同胞のみなさん!
わが大学を開校しようとした時、私たちの活動を妨害し、膨大な支障を与えたのは日本政府の非友誼的措置だけではありませんでした。また、李承晩徒党とそれと結託している民団悪質分子だけではありませんでした。
私たちの組織内部にもたくさんいました。ある人は「大学なんて? 高等学校も正常に運営できないのに」と、言いながら誹謗し反対しました。またある人は、「同胞たちがその日その日を暮らしていくのも大変だというのに、大学建設基金カンパなんてできるか?」と言いながら、空騒ぎはするなと攻撃しました。また、ある人は仕方なく賛成をしておきながら、なんもしませんでした。しいては私たちを誹謗し、攻撃するために根拠のない流言飛語を流しました。その者たちは「朝鮮大学の資金をすべて流用している」と、宣伝することによって、敵に大学建設だけではなく、教育会と総連を弾圧する口実を与えるという、過ちを躊躇することなく行いました。
しかし、多くの愛国同胞たちは私たちの指導と組織を信頼し、私たちを支援し、莫大な基金を拠出してくれました。私たちは祖国の援助と同胞たちの援助に勇気百倍、自らの事業を推し進めることによって、祖国とわが民族の前に、自らに課された任務を成し遂げるという固い決意に満ち、あらゆる誹謗攻撃に耐え、尽力しました。
そして世界の人類史上初のこの偉大な作業をここまで推し進めてきました。このことは在日朝鮮人だけの誇りでありません。真理と科学を愛するすべての人民の誇りであり、偉業でもあります。
私たちは祖国と人民の前に、一度誓い、決意をしたならば、いかなる困難と隘路があっても、それを克服し、その目的を達成するために、あらゆる知恵と情熱と能力をすべて出し切り、また自らが率先して実践してきました。今日、皆さんとともに、祝っているというこの事実が、それを雄弁に物語っていると、自負する次第です。
わが大学の前に立ち並ぶ樹木の陰に下を流れる二筋のせせらぎは、東京都民の命の水である玉川上水です。その澄んだ流れは歌をうたい、風になびく枝は、水の音に合わせて踊るように、詩興を呼び起こします。五日市街道の街路樹が彩を添えています。それだけではありません。大学の裏手に城壁のように延びた青梅街道の美しいけや木は、わが大学の風景をいっそう美しく飾っています。花開く春、緑、紅葉で色づく秋、雪降る冬、四季色とりどりの風景は、それこそ壮観です。
晴れた日には箱根の山並みと富士山を一望することができます。建物は高く、敷地は広く、教育施設としてはいうことのないうえに、水清く、樹木が生い茂り、空気が澄み、学問を探求する学生には二つとない環境です。
敷地の総面積は五万九千七百八十八平方メートル、建坪は本館など、四棟で四千五百五平方メートルにもなります。今後、この敷地を十分利用して、各種の施設を完備し、体育施設としてテニス、野球、サッカー、バスケットボール、バレーボールなどはむろんのこと、陸上競技場も立派に整備することになるでしょう。そうなれば、8・15解放記念日、九月九日の共和国創建記念日などには、近隣の同胞数万名が参集し、連合大運動会なども楽しむことが出来るでしょう。
百二十キロワット時の容量の電気施設、三五〇尺の深い水源から一日一八〇トンの清水を汲み上げることができ、いかなる雨期にも心配することなく下水道が完備されています。特に建築物は朝鮮建築の優雅な造形美を垣間見ることができるようになっており、私たちが誇れるものです。研究棟と厚生棟に挟まれた中庭には、五角星輝く共和国の国旗が朝鮮人民の気相のように高くそびえ立ちなびいており、池には噴水が虹の形で噴出しています。その池には金魚と鯉が泳ぎ回り、青々とした芝と華やかに咲くツツジが一幅の水彩画を成すでしょう。
ここに、これから近代的な施設を完備した寄宿舎をはじめいくつかの施設が備われば、学問探求に熱中する学生たちの楽園になることでしょう。
親愛なる同胞の皆さん!
偉大な任務を担い、祖国の期待と在日同胞たちに嘱望されている私たちの大学は、わが祖国とわが民族の栄誉と直結しています。
私たちはこれからこの大学をいっそう美しく、立派に、いかなる大学の施設にも劣らなくすることによって、わが祖国のわが民族の栄誉をより高く末永く輝かせなくてはなりません。同胞有志に誠心誠意の支援と協力を要望し、期待するのも、ここにあります。
私たちはアメリカ帝国主義を頭とする李承晩徒党とそれと結託する日本の一部政治勢力の妨害策動の中においても、この栄誉ある任務を遂行しなければなりません。私たちの前途には、けっして平たんな道だけではなく、容易なことだけが残っているのではありません。学校の認可獲得の問題、学校の施設を整備する問題、研究機材を完備する問題、学生の数と質を向上させる問題、教育内容を豊かにし、教員の質を高める問題など難題が山積しています。
それでなくても、何ら妨害がなくても大変なのに、様々な口実をつけ、私たちの活動を妨害し、破壊しようとあらゆる手段と方法を駆使している者たちの策動は終わっていません。
しかし、私たちは今までも戦って勝ってきたように、これからも団結を強め、朝鮮人民が志向する道で戦うならば必ず勝利するとの確信に満ち溢れています。
私は最後にこの偉大な事業を成功裏に遂行するために、私たちの大学のより大きな発展のために、みなさんの健康を祈って、祝杯をあげることを提議します。
*ここに紹介した韓徳銖学長の記念講演は、七月七日、内外人士三〇〇余名が参席の下に行われた新学舎祝賀会で行われたものである。これに先立ち、六月一三日、三千余の同胞の傘下の下に大学の中庭でも祝賀会が催された。(「記録する会」)