在日朝鮮人コミュニティがあるから、子どもたちが安心して表現できる
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事故の後も現役、個展は三月で二三回目
金今も制作を続けているんですか?
朴制作はもちろん今でも続けていています。
実は私はちょうど十二年前、電車と接触事故をおこし脳挫傷で入院していました。一時は昏睡状態までなりましたが、なんとか助かりました。車椅子生活から抜け出そうと必死でリハビリし、どうにか退院できたのですが、右半身に後遺症が残ってしまいました。
事故の前に約束していた個展の話があったのですが、どうしても断るのが嫌で、でも絵が描ける状態ではありませんでした。キャンバスに珪藻土と絵の具を混ぜた泥のようなモノを自由の効かない右手に左手を添え指で引きずるように描きました。
その頃、一つ(片方)だけでは成立しない、陰と陽が表裏一体としてバランスを成す陰陽思想とか、木火土金水の五行説とかの東洋思想に触れ制作していましたが、アメリカでの展示を控え、どうしても作品を軽くする必要に迫られたので、キャンバス布の裏にリハビリを兼ね線(ライン)で描きました。その作品「五行」がニューヨークでのアルン展とソウル展でも展示されました。それ以来、今でもラインアートは続けています。
二〇〇九年に韓国国立現代美術館で開催された企画展覧会아리랑꽃씨「Korean Diaspora Artists in Asia」に在中、在中央アジア、のコリアンアーティストとともに一七人の在日コリアンアーティストの一人に選ばれ、出品しました。この展覧会を前に、国立現代美術館のキュレーターが神戸朝高美術室に訪ねてきて、今まで制作した作品を全部並べてみたのですが、中々面白かったです。この時にも出品した「五行」は、韓国国立現代美術館の所蔵作品となりました。国立現代美術館に作品が収まったのはウリハッキョ出身者では初めてで、歴代でも四人目だそうです。
二〇〇二年にあったアジア最大の国際美術展である光州ビエンナーレにも出品し、現地へも行きました。
画廊企画(招待)で京都の同時代ギャラリーと芦屋画廊で交互に毎年個展をしています。今年の三月の個展が二三回目となりました。近年、以前取り組んでいた色んなモノとモノ(国、社会、人)の「間」をテーマとし、この世で一つしかないオリジナルの形、水平も垂直も無いシェープドキャンバス(変形キャンバス)を創り、そこへ面相筆で一筆描きのように全部の線を繋げて描いています。毎年線に変化が現れ、この世界は深いな…面白いな…と感じます。
金学美の審査に影響を受けることはあるのでしょうか?
朴私の作品に学美が直接影響は与えていませんが、審査の過程で生徒が創り出す造形の力に「凄い!」と感心させられます。審査の度に刺激があるので、そう言った意味では影響があるかも知れません。
金在日朝鮮人の美術について思うことは?
朴最近、個展作家が少ないのが少し気になります。自分の立っている立ち位置から何が見え、何を感じ、表現したいかを問うてこそ作家だと思います。教員も制作する。制作の喜びを知る。制作してこそ、創作の喜びを生徒と分かち合える。これが学美の特徴でもあるようです。34