在日朝鮮人コミュニティがあるから、子どもたちが安心して表現できる
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オープンな審査、自由に表現する子どもたち
金学生美術展覧会の審査には何人くらいが携わっているのですか。
朴今年の中央審査は三十三人で行いました。
金その人たちは教員ですか?
朴各地で教えている美術教員たちで、新任の先生も参加します。推薦作が集められて、中央では入賞作を選びます。昔は作業をする人と審査委員がいて、審査委員だけで選んでいたのですが、今は全員で審査して全員で作業します。経験の浅い教員たちはグループを作って、そこで協議して二点選びます。グループ内ではどの作品を選ぶか、大変活発な、時には激しい議論が交わされます。そのあと、グループごとにどうしてその作品を選んだのか、全員の前でプレゼンテーションします。この時は私も質問を受けると同じようにプレゼンし、最後は挙手で決めます。
若い教員たちは、絶対入賞するだろうという安全パイは置いておいて、ぎりぎりの線を狙ってきます。それでプレゼンをして試そうとする。「あれっ」というような作品を拾い上げてきてその作品についてプレゼンするんです。するとなるほどなあと思います。若い先生たちは、先生同士で切磋琢磨しています。何度も出てくる教員はやはりそれなりの実力を持っています。経験年数に関係なく、実力が認められる教員には中央審査委員になってもらいます。実力主義です。
審査委員長になって最初に私がしたことは、審査委員を選挙で決めるということでした。皆で選挙して、経験年数に関係なく、得票数の多い人から順に八人で審査委員会を構成することにしました。緊張が走りました。そのあとも審査委員を固定しないために毎年方法を変えていきました。今年の中央審査は教員三十三人のほかに、鳥取県立大学の仲野先生や学生、立教大大学院で在日朝鮮人について研究しているスーザンさん、学美山陰実行委員会のメンバー、「60万回のトライ」の監督ら十七人のゲストが審査に参加しました。なかなかいい審査をしてくれました。
金一万点以上の作品を審査するというのは大変ですね。
朴本当、大変です。鳥取大学の仲野先生はいつも「体力勝負だね」とおっしゃいます。
金何日間にわたって行うのですか?
朴一週間です。仲野先生にはいつも最初から最後まで一緒に審査していただいて、ありがたいです。
金意見が対立することもあるんですか?
朴あります。今年もいろんな意見が出て、喧々諤々、鳥取の大学生たちの前でも一切隠さず、オープンにやりあいます。
金じゃあ、楽しみでもありますね。どんな絵が出てきて、どんな意見が出てくるのか。
朴そうそう、保守的な意見もあれば、面白い意見もあるし、いろんな意見が行き交います。地方ごとの特色もあって。
金こういう絵を描くようになって、子どもたちに変化はありましたか?
朴表現することを恐れなくなりました。制約がなくなりました。上手だということにあまり意味がなくて、下手だからと委縮することもなくなった。表現することが自然になりました。それは非常に大きな変化です。
金美術部の活動は毎日ですか?
朴月曜は活動しません。火曜から土曜まで毎日だいたい二時間ほど、日曜日は一日中ですかね。
金生徒同士の交流はどうですか?
朴高級部を中心に一部中級部も含みますが、ウリハッキョ美術部の生徒たちが集まって、毎年全国範囲で合宿をしています。今年は淡路島で三泊四日の合宿でした。
金生徒たちの評判はどうですか?
朴去年までは、現場で同じ時間同じ場所でどんなものを描くのかというライバル意識がぶつかり合うような感じもあったのですが、今年は年間を通じてどういうことをしてきたのかという交流と、仲野先生や卒業生の講演など勉強会を兼ねました。学校を越えて四つのグループに分け、合評から展示場所、方法まで全部生徒主動で行われました。初日には、学美に出品する作品をプロジェクターで映し出し、各学校から四~五人出てきて自分の作品について全員(約八〇人)の前でプレゼンテーションし、意見交換しました。
金卒業して美術とは違う道を進んでも引き続き描く生徒も多いのでしょうか?
朴そうですね。こういう展示会があれば訪ねてくるしね。この間京都で教員たちの作品展示会をしたのですが、元教員たちもOBとして出品しました。
金教員として生徒たちが美術とどういうふうに付き合ってほしいと考えますか?
朴美術は表現なので、いろんなことを経験して、いろんなことを考えて、自分の立ち位置から何がどう見えているということを考えてほしいと。それを表現する手段を持っているということを自覚してほしいと思います。歌なら歌でもいいんです。美術を通した表現方法を持っているということを自覚してくれたらうれしいですね。