元気を出して、私たちがいる あきらめなければ、必ず勝利する
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〈韓国の教育について〉
髪引っ張って泣きじゃくる長女
金韓国の一般教育について伺います。実際に子ども育てながら感じることは?
孫「娘が二人います。大学一年生と高校二年生です。子どもたちは、小学校は一般の公立学校に送りました。公立学校に送りながら感じたのは、入試中心、成績第一の教育ということでした。上の子は勉強が比較的できました。ところがある日、学校から帰ってきて自分の髪の毛を引っ張りながら泣きじゃくるんです。試験でわかっていたのに間違えたと言って。間違えることもあるじゃないかと言っても、通じないのです。わかっていたのに間違ったことも悔しいし、自分よりも成績の悪い友達が自分を追い越していくことも悔しいし。友達を競争相手とみなして悔しがる姿を見ながら、中学、高校と進学するにつれ、さらに入試中心になって行くのにどうしようかと頭を悩ませました。
金何年生の頃ですか?
孫「小学校四年生でした。二年後には中学校に進学するのに、友達への競争心ばかり強まるのではないかと、それでいいのだろうかと。代案学校という考えも浮かんだのですが、私も夫も活動家です。公教育に問題があるなら、それを正すために闘うべきなのに、自分の子どもだけ公教育を避けて代案学校に送っていいものかという思いもありました。
そんなある日、夫が全羅南道の康津(カンジン)に文益煥学校があると聞いて来ました。ヌッポム(文益煥氏の雅号・晩春の意味)の統一精神で、新世代の統一世代を育てることは重要なことで、夫もそういう学校を作りたかったというのです。とは言え作ることはできないので、今ある学校に自分の子どもを送ることで、統一精神を継承できるのではないか、必ず送りたいと。夫はそういうものの、私は活動家が代案学校に送ってもいいものだろうかと相変わらず悩んでいました。経済的な問題もありました。私たちに代案学校は贅沢だと、夫婦でもめる日が続きました。
そんな両親を見ながら子どもが、自分が通う学校だから一度見に行こうと、見てから判断すればいいじゃないかと言うので、長女が六年生の秋に自宅の仁川から六時間かけて訪ねてみました。
文益煥学校で環境に優しい共同生活
金康津は朝鮮半島の南端、仁川からはかなりありますよね
孫「中学一年生と言えば十三、四歳で、そんな幼い子たちを遠く離れた田舎の学校の寄宿舎に送るのは不安でした。ところが生徒たちに聞いてみると穏やかでいいのだそうです。長女も気に入ったようで、行きたいというので送ることにしました。長女が楽しそうなので次女も行きたいと言い出して、今は次女が行っています。長女は六年間通って今年春に卒業した後、三月からソウルの聖公会大学に通っています。
公教育について親は、誰も同じように悩んでいると思います。このままではいけないと思いながら、自分の子どもだけ代案学校に送ってもいいものなのかと二の足を踏んでいる人は多いと思います。もちろん経済的な問題もあるでしょう。公教育の場合、中学校は義務教育なので授業料はいりません。六か月で二〇万ウォンほどの会費だけ出せばいいのですが、寮制の代案学校は、食費など生活費も必要になります。文益煥学校の場合は、ひと月七〇万ウォンほどかかります。
ところがうちの近所の子どもたちの話を聞くと、公教育では学費以外に膨大な私教育(塾など)費がかかります。塾代が一か月一科目あたり二〇~三〇万ウォン、近所の子どもは二科目なので四〇~五〇万ウォンかかると言います。それに食費や制服、流行の服やカバン、学用品、スポーツウェアなど。最近はどの子もみな制服のようにザ・ノース・フェイスのジャンバーを来ていますが、そういうものも同じように買い与えなくてはいけません。一着三〇~四〇万ウォンするようなものでも、自分の子どもだけ着せないわけにはいかないのです。そういうことを考えれば、田舎の学校の寄宿舎にかかる費用はずっと少ないのですが。それでも二人を送るのは大変でした。
金その学校ではテレビやコンピュータは使えるのですか?
孫「コンピュータはコンピュータ室で勉強用に使うだけです。先生や他の生徒たちがいる場所でだけ使うようになっています。学校では携帯電話やスマートフォンの使用は禁じられています。普段は学校で管理して一か月に一度、四泊五日で家に戻るときに各自に返してもらうことになっています。それでもコンピュータの使い方はよく知っています。
学校から手紙が来て、子どもたちが夏休みや冬休みの間、節制した生活を送れるように父母たちも協力を求められます。学校では週に一回鶏肉料理を出しますが、肉食、特に肉を焼いて食べるということはあまり薦めません。タンパク質は大豆から摂るようにしているようです。なので帰ってくるとサムギョプサルを食べたがります。ところが通って何年かすると食の好みが変わるようで、あまり肉を食べたいと言わなくなります。大豆や野菜を好むようになって。
金学校の方針なのですか?
孫「学校は環境に優しい共同体生活を目指しているので、有機野菜などを積極的に取り入れています。油の多いものは肥満など健康によくないということで、健康的な食卓を目指しているようです。
金運動は?
孫「朝七時に起きると、瞑想する生徒もいればジョギング、卓球やサッカーをする生徒もいてそれぞれ自由に運動して過ごすそうです。九時からは授業で、その後はプンムル(打楽器などを用いた韓国の伝統芸能)やバンドをしたり…。遠足が多いようです。ヘナムタンククマウル(朝鮮半島最南端の村)に行ったり、智異山で山登りをしたり。
金修行のようですね。
孫「でもグループでするので、子どもたちは楽しいようです。いろいろ課題が出されるようです。例えば歩いてヘナムまで行くという課題では、自分たちで下調べをして村の事務所に訪ねて行って、集まった人たちに自分たちの目的を説明して泊めてもらい、朝起きたら自分たちで朝食を作って迷惑をかけないようにきれいに掃除をしてくるとか、行きかう人にしっかり挨拶をするとか。先生たちは同行しますが、危険はないか見守るだけで口出ししません。
金そうしてその学校を卒業して大学に進んだときに、他の学生たちとうまく付き合えるのでしょうか?
孫「ヌッポム学校の教育は統一教育なので、北に対して悪く言う学生に対しては「同じ民族なのに、そんなことを言ってもいいの」と指摘するそうです。すると「お前、アカなのか」と言ってくる学生がいまだにいるようです。公教育が人間中心の教育に変わるべきなのですが。革新教育が広まりつつあると言われていますが…。
「児童虐待で親訴えるべき」とドイツの友人
金革新学校の試みは始まったばかりなのでしょうか?
孫「進歩的な人が教育監を務めている地方を中心に、広まりつつあるのですが、まだ絶対数が不足しています。急速に広まっているというわけではありません。今も初等学校の児童が早朝から夜遅くまで塾通いで、一〇時、十一時にようやく帰宅するという例が少なくありません。子どもたちの教育という理由もあるのですが、共稼ぎで子どもを見てくれる人がいないので、給食の出る塾や自習室に通わせるという裏事情もあります。
ドイツから来たある友人は、韓国の父母たちを児童虐待で告訴すべきだと言っています。朝早くから夜遅くまで親たちは仕事に、子どもたちは勉強に追いやられているのです。問題のある子どもたちに心理治療の一環で家族の絵を描かせると、多くが寝ている姿を描くそうです。子どもには寝ている姿しかイメージがないのです。
金代案学校に送ってよかったと?
孫「はい、経済的に苦しかったということを除けば。それでも学校にすれば全く足りていないと思います。公教育が代案学校のように、親も安心して送って子どもも満足できる教育に変わらなくてはならないと考えます。
政府は「条件クリアすれば支援」
金代案学校への政府や自治体の支援を求める運動は?
孫「代案教育連帯と言う団体があります。連帯では、親たちは同じように納税義務を果たしているので支援をすべきだと要求しています。これに対して政府は、カリキュラムなど教育内容について条件を出しています。それらの条件をクリアすれば支援するというのですが、代案学校が目指すのは環境に優しい共同生活です。農業をしたり、家を建てたり、「セウォル」号惨事が起きた時には彭木港を、四月三日には済州島を、五月には光州を見学して、実際に見て感じることが教育だと思うのですが、政府は認めません。なぜ子どもたちをデモや集会に駆り立てるのかと言うのです。
四~五年前だったと思います。ヌッポム学校が海軍基地の建設に反対している済州島・カンジョンマウルに生徒たちを連れて行って、掃除をして、海軍基地は米軍基地だ、建設してはいけない、カンジョンを守らなくてはと三~四日課外活動をしました。これについて「東亜日報」が、ヌッポム学校では校長や教員が子どもたちを集会やデモに連れまわして、「従北教育」をしていると報じたのです。「アカ」の学校だと、私や夫、その他数人の父母たちの名前を挙げて中傷しました。これは、ヌッポム学校で学ぶ子どもたちへの人権侵害です。東亜日報社の前で文化祭を開いて子どもたちが歌を歌ったり、踊ったりする姿を見せたりして一年間闘いました。一定の勝利は収めて、訂正記事を掲載したのですが、謝罪までは得られませんでした。マスコミはいつも自分たちの報道に対して責任を取りません。
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